EVERYDAY
NOTES - archive - 2011 november
11月30日(水)
朝、起きてすぐに温泉という贅沢。露天風呂に入って体を起こす。霧の森大福という幻の抹茶大福を一同で買いに行って、伊丹十三記念館に行く。中村好文さんによる設計で、焼き杉に覆われた箱に中庭が切りとられた平面構成。ゆっくりと展示品を見る。伊丹さんのイラストやテレビCMに驚き、父・伊丹万作さんの影響を読み取ることができた。歌留多が印象に残る。少しして館長の宮本信子さんが登場。実に素敵な笑顔でお話しする。最後には「内田家社員旅行」として記念撮影。もちろん「ビックスマイル」で!最後は宮本さんは大きく手を振って走ってバスを送ってくれるという映画のワンシーンのようだった。
昼は、丸亀市に行って「明水亭」といううどん屋へ。釜揚げうどんを2玉いただく。腰があって、とっても美味しかった。自家製はちみつとアイスも絶品。そして、バスは一路三宮へ。実に弾丸ツアーであったがとても楽しかった。四国に行ったのに、香川県庁舎を見てないという建築家として情けないが、近く再訪したくなった。
三宮でみなさんと別れ、一人新幹線で帰京。車内、ほぼ日の原稿をひたすら書く。温泉と睡眠のおかげで、体調も万全、筆も進む。
夜、東京で旅の荷解き、デスクワークにメールなどの雑務。
11月29日(火)
朝一の電車で三宮へ。内田先生のいろんな関係者が集まって20名ちょっとでのバスツアー。「内田家社員旅行」と題して、一路愛媛は松山へ向かう。明石海峡を渡る際に「渦潮」を見たこと以外は何も覚えてないで、ひらすら爆睡。松山城をみんなで見学。迷路のような平面計画や石垣が印象に残る。ホテルにチェックインしたら、みんなで道後温泉本館へ。80分、たっぷり貸し切り状態で温泉を満喫し、日頃の疲れも吹き飛ぶ。早めの食事も頂き、旅のメインである内田樹先生の講演会へ。
伊丹十三と「戦後精神」と題しての90分の講演。1000人を前にしての講演は、先生も力が入っていて、伊丹十三と大江健三郎の話から彼が内包していた日本に対する問題意識や欧州に対する憧れも含めて『ヨーロッパ退屈日記』を丹念に読み解きながら、戦前と戦後の日本人の決定的違いについて熱く語られた。
夜は、宿に戻っての二次会。ここでも内田先生を囲んでワイワイ楽しいお話しが飛び交う。ここでは詳細は書けない。たっぷりビールを飲み、楽しい宴会も終え、みんなで深夜の露天風呂へ。ここで、僕は内田先生に合気道をやりたい旨を伝えると、快く承諾してもらい、来月から凱風館でお稽古させてもらうことになった。
11月28日(月)
午前中、メールなどの雑務。そして梅田へ出て見たかった映画『エンディングノート』(監督:砂田麻美、2011)を見る。いやはや、度肝を抜かれる。涙が止まらない。僕は小説や映画で泣いたことがないが、これだけ涙があったことに驚くくらい。すごいリアリズム。命の尊さはもちろんのこと、家族という共同体のもつ普遍的価値観があれほど綺麗に描かれた映像作品はあっただろうか?期待して行ったにも関わらず、ずっしりと重い、だけど爽快な生きる勇気らしきをもらえる映画は希有。2本立て映画館や飛行機以外で2つの映画を見るのは初めてで、続けて『ステキな金縛り』(監督:三谷幸喜、2011)を見る。こちらは、笑いもあり楽しくエンターテーメントとしての王道を楽しませてもらった感じ。
夜、帰宅して旅の準備。2本の映画の合間にふらふらっと寄った本屋さんでみつけた岸田秀さんの『ものぐさ精神分析』をパラパラめくる。面白そうな読書だ。これも、伊丹十三さんとの対談で知った新しい出逢い。
11月27日(日)
始発で凱風館へ。撮影に付き添う。外観を朝の光で撮って、続けて内部を撮っていく。引越しの後なので、物があふれる中、あれこれと工夫してまた違った竣工写真を撮ることが出来た。出来上がった写真を見るのが楽しみだ。
夜は、山本画伯と手伝いにきてくれた谷口女史と三人でピッテェリアへ。思えば今年、この三人で出雲大社に行ったのが出逢い。あの時から始まった「老松」への旅。今となっては完成したということに感慨深く、話もマシンガントークが続く。また画伯と一緒に仕事がしたいと心から思う。
11月26日(土)
午前中、メールなどの雑務とプレゼンの準備。昼、ギャラリーMITATEにて安東さんの個展を再訪し、約束していた布を受け取る。展示を見にきていたGAの杉田さんともご挨拶。
午後、事務所に戻って模型写真を撮って、プレゼン資料をまとめる。午後3時、お施主さん夫妻が来所。3つの模型を1つずつ説明し、コンセプトから空間の特徴までを話し、設計の進め方をお伝えする。凱風館のオープンハウスにお越し頂いたので、凱風館の進め方を参考に分かり易くお伝えできた。また新しい物語が生まれようとしている。
この1週間、集中してプロポーザルをまとめたので、やりきった達成感に包まれながら、旅の準備をし、明日の朝が早いので夜行で関西へ向かう。
11月25日(金)
午前中、メールなどの雑務とプレゼン資料の準備。いよいよ模型もブラッシュアップされ、開口部のデザインや屋根の検討においてもやりたいことが見えて整理されてきた。模型というのは不思議なもので、手元で見るのと少し離れて見るのとではまた違った様相になるので、そうした都市的な検討もまたしっかり進めたい。
深夜まで作業が進み、やっと目処が立った。よくぞ1週間でここまでまとまったが、エネルギーというのはそういうもの。こうした想いをしっかりと建築として立ち上げたい。
11月24日(木)
午前中、メールなどの雑務。昼、日大船橋校舎へ。ベーシック建築デザインの授業。いよいよ提出前の最後のエスキース。それぞれがしっかりと軸組模型をつくってきて、そこから案のもつポテンシャルを磨いていく。まだ創作課題を始めたばかりなのに、よく頑張っているように思う。作品の善し悪しや図面/模型の精度も大切だが、それよりも各自ののびしろをどう発見し、建築を好きでいることについて考えている。
夜、事務所に戻って仕事。メールや電話対応が続く。「三宿テラス」の工程について考える。深夜、新しい住宅のスケッチを再度重ねる。面白いものができあがっていくのを実感できると一安心。やっと、そこまで来た。報告。
『呪いの時代』(内田樹、新潮社、2011)を読み終わる。いつになく面白く一気に読み通す。『日本辺境論』以来の衝撃。社会が大きく変動する今、こうして頭の中を整理するのに必要な言葉たちが並ぶ。そのキーワードが実は「呪い」だったということに驚きつつ、「祝福」という言葉に大きな可能性を感じる。たくさんの人に読んでもらいたいとお勧めしたい。
11月23日(水)
今日は勤労感謝の日。世間は祝日だが、僕は通常通りお仕事。新しい案件のスケッチと模型づくりが進む。このアイディアが生まれる瞬間というのがとてもエクサイティングで設計の面白さと難しさを実感。とにかく納得のいくまでスケッチを重ねる作業の繰り返し。
夜、安東陽子さんの個展のオープニングへ。布を使った新しい試みで、ガラスに貼れる装飾品を開発していた。とても綺麗だし、きっとこれからまだまだ展開できる可能性を秘めていて面白かった。
深夜、また集中してスケッチ。3つの案がバランスよく出揃ってきた。ほぼ日の原稿のチェックバッックもして、すぐに送信。ホームページのアーカイビング作業も進める。
11月22日(火)
午前中メールなどの雑務。マトグロッソの浅井女史が来所。ほぼ日の連載を読んで、書籍化のことなどを打診される。しかし、『みんなの家。』はアルテスパブリッシングで来春の書籍化を目指しているとのことを伝えるも、何か一緒にやろうということであれこれ話し合う。本づくりも一期一会な共同作業。『みんなの家。』連載が終了したら、来年からマトグロッソで引き続き、「ベルリンや旅のこと」をテーマに連載させてもらうことになった。本当に有り難いことだし、良いものをつくっていきたい。
午後、新規プロジェクトのコンセプトを整理して、平面のスケッチを進める。トレペに2Bの鉛筆でかりかりスケッチするのが好きだ。どんどんバリエーションを描いていく。模型も早速検討スタート。あっという間に夜になっていた。
夜は、ほぼ日原稿。又しても今週の更新の分をやっと書き上げる。設計している時の脳の使い方とは明らかに違う思考の回路を使って書き上げる。このバランスは心地よいし、大切にしたい。担当者に送信して寝る。
11月21日(月)
朝5時に起きて、広い道場を後にする。ぐっすり快眠。暗い中始発の新幹線で帰京。家に荷物を置いてすぐに東工大へ。昨年に続き友人が担当している法規の授業にゲストとしてレクチャーさせてもらう。4年働いたドイツでの経験と日本での初仕事、凱風館について1時間話す。安田先生にご挨拶し、新しく完成した図書館を見学して事務所に戻る。
ドイツから遊びに来てくれた友人と再会し遅いランチ。いつものように一番高いところ(六本木ヒルズ)に行って、山手線の再前席に座って1周することをお勧めする。近況報告で大いに盛り上がる。午後、メールなどの雑務と「三宿テラス」のフィードバックと電話対応。凱風館の取材依頼などの対応もまとめる。
夜、「三宿テラス」の打ち合わせと打ち上げ。やっと目処がたち、いよいよ来月工事がスタートしそうで一安心。また現場が動き出す。これまた楽しみだ。久しぶりにワインとウィスキーを頂き、楽しく宴になる。
11月20日(日)
午前中メールなどの雑務。昼前、凱風館に行ってお掃除。引越しのお手伝い。書斎と客間を段ボールフリーな空間にして、午後甲南麻雀連盟のメンバーが揃い乾杯する。ついに例会もスタートし、早速3卓を囲んでわいわい楽しく麻雀。何だかにわかに信じられない気持ちになり、牌は手につかず3戦0勝。上位に食らいついて行けず、ズルズル。神戸マラソンを完走し、夕方に串カツを持って登場した平尾さんとマラソントーク。西さんもさすが大阪マラソンでサブ4をやりのけた余裕が漂う。とにかくとびっきりハッピーな時間。締めのラーメンまで徒歩圏内にあり、熟たまラーメンを頂く。
夜、明日の始発のため凱風館に泊めて頂く。広い道場で布団一枚。イグサの香りに包まれて、いい夢を見た。ここは、地域の避難所にもなるような広さであることを一人っきりで寝ながら考えた。
11月19日(土)
朝から強い雨。ぐっすり寝た。メールなどの雑務。昼、東工大のレクチャー準備。新しいプロジェクトのスケッチも進める。
夕方、今年の日本シリーズを初めて見る。もう第6戦。投手戦を中日が逃げ切って逆王手。明日、2011年のプロ野球が終わる。しかし、ダルビッシュの解説はさすがの一言。超一流現役選手による解説は素直に面白かった。
『呪いの時代』(内田樹、新潮社、2011)を読み始める。いきなり面白い。「新しいものを創造するというのは、個人的であり、具体的なことです。(中略)創造する者は、匿名性にも忘却にも逃れられない。自分で創ってしまった「物」がそこにあるのですから、逃げも隠れもできない。」という文章にハッとする。
深夜、「ほぼ日」原稿を書き進める。少しペースアップして書き貯めたいものだが、なかなかそうもいかなそうだ。
11月18日(金)
朝一の新幹線で凱風館へ。引っ越しの荷物、段ボールでごったがえす凱風館。内田先生と合気道のお弟子さんたちと本の箱を整理して、本棚がレヴィナスやラカン、ユダヤ関係、映画、身体論などに分類されてどんどん埋まっていく。マンガや文庫本、ビデオ/DVDは手つかず。しかし、書斎に本が入り、空間が生きられるのを実感。本の背表紙たちが建築の壁のマテリアルと変わらない存在感を放つ。
午後、凱風館の取り扱い説明会。ガス/電気/空調/PSなど建築のライフラインを担当者に説明してもらう。夜のお稽古の時間まで書斎の整理を進め、少しは段ボールがまとまった。
夜、藤本壮介事務所で8年働き、今年独立された建築家・青木弘司さんのレクチャーを聴く。これからの所信表明であり、師である藤本氏との関係が見えて、とても刺激的なレクチャーだった。僕も建築家としての処女作である凱風館が完成し、これからのスタンスを考えるきっかけをもらった気持ちになる。
11月17日(木)
午前中、四谷にて打ち合わせ。ヒヤリングして、あれこれと話し合う。昼、日大船橋校舎へ。ベーシック建築デザイン。設計課題のエスキースと軸組模型の指導。授業が終わる18時にはもうすっかり真っ暗になっている。
夜、事務所で「三宿テラス」の打ち合わせ。見積りと工程について話し合い、今後の進め方を確認。気がつけば2時間半、みっちり話し合う。打ち合わせのフィードバックをし、その他神戸行きの準備をする。
11月16日(水)
午前中、メールなどの雑務。ほぼ日の原稿を書き上げて送信。毎週更新の連載は本当に大変だが、どうにか間に合った。やれることをやれる時にやるのみです。
午後、「三宿テラス」の図面チェックとアップデート。明日の打ち合わせで目処を立てられれば、いよいよ来月には着工予定。こちらは初めてのリノベーション・プロジェクト。
11月15日(火)
始発に乗って凱風館へ。撮影二日目。晴れたので綺麗な光の中で、凱風館の撮影が続く。鈴木さんは、淡々と空間の中を歩き回り、シャッターを切っていく。とにかく光の具合見定め、影との関係を考えながら一期一会の写真を撮っていく。こうしたプロフェッショナルな仕事をそばで二日間も観ることができて大変面白かった。出来上がった写真が楽しみだ。
夜の新幹線で帰京。この週末は本当に凄かった。凱風館竣工という節目を大変多くの方々と共有することができ、感謝の気持ちでいっぱいです。これほど祝福された建築は珍しい。しかし、能の舞台開きと道場開きが行われ、凱風館がついに出航した。お越し頂いた皆様、本当に本当にありがとうございました。
11月14日(月)
朝から写真家の鈴木研一さんによる凱風館の撮影。引っ越し前に竣工写真として外観も内部もみっちり撮ってもらう。平川克美さんに小田嶋隆さんも凱風館を見に来て、続けて三宅先生と池上先生がお越しになって、凱風館をご案内する。午後からは古武道の甲野先生が凱風館にいらして、ご案内し、お稽古まで見学させてもらう。今日も週末に続き、濃厚な一日となった。
11月13日(日)
朝から凱風館へ。東京から合気会の多田先生がお越しになって、凱風館で道場開き。半年以上も前からこの日を一つの節目として準備してきたのでどうにか建築工事の方も間に合って良かった。
タクシーで到着した多田先生が凱風館を実に優しい眼差しでみつめられ、また微笑ましい表情でゆっくりと入っていかれたので、何だととてもほっとした。そして、150人以上ものお弟子さんが道場の中でお稽古する。凄い密度だが、とってもいきいきした空気が道場の中を充満し、ぴりっとした緊張感の元3時間のお稽古が行われた。ついに道場開きが行われた。合気道をやってみたくなる。
夕方、神戸ベイシェラトンホテルにて「凱風館開館記念パーティー」に出席。合気道の関係者を中心に300人弱の方々が出席され、とにかく平川さんに中沢先生、鷲田総長、三宅先生に池上先生と蒼々たる顔ぶれの中、「凱風館ができるまで」というプレゼンテーションをさせてもらった。本当に皆様のスピーチを聴きながら胸の高鳴りをぐっと押さえるのに必死だった。二次会も終電ぎりぎりまで麻雀連盟の皆さんを中心に大いに楽しませてもらった。るんちゃんの「政治/宗教/プロ野球」ってのが帰路ずっと頭から離れなかった。
11月12日(土)
朝から凱風館でオープンハウスの準備。中島社長も岐阜県から来て、神戸支店も総出の25人で準備してくれた。快晴の下、内田先生が登場し、鍵の引き渡し式。人生初めてのテープカットまでしてオープンハウスがスタート。
山本画伯のご友人であるデザイナーの三木健さんが最初のお客様。道場から順次案内する。もう次から次へと総勢400名強のお客様がお越しになり、挨拶に案内に翻弄される。しかし、足掛け2年の僕の処女作でもあり、内田先生と出逢ってからのことを走馬灯のように思い出したりもした。大学時代の同級生も東京からわざわざ来てくれて、とにかくスペシャルな時間だった。建築空間は、いくら写真や映像で見ても、実際に体験することとは別物。こうして多くの方々とこの瞬間を共有することができて大変嬉しい。両親と祖母も来てくれた。
夕方、道場の畳をめくって能舞台として舞台開きをし、続けて内田先生による感謝状が関係者に送られ、最後に内田先生と中島社長と僕の3人で寺子屋鼎談を行い「日本の木の家をつくる」と題してお話をさせてもらった。それから懇親会が行われ、みんなで食事をし、美味しい酒を飲む。長くて濃厚な一日が終わった。今日という一日は今まで僕の人生にとって忘れ得ぬ晴れ舞台であったことは間違いないし、それをこれだけ多くの方々と共有できたことが何より嬉しい。
奈良からは小学校時代の友人が最後に来てくれて、案内し、車で送ってもらう。車内、あれこれ話し、近所のバーで珈琲を飲みながらの近況報告を深夜まで盛り上がる。
11月11日(金)
朝一の新幹線で凱風館へ。外構のチェックなど最後の最後。昼すぎ、テキスタイルデザイナーの安東陽子さんが現場に来て、カーテンを一つ一つ確認して取り付けていく。室内はクリーニングも終わり、綺麗に輝いていた。ついに凱風館が完成したんだという気持ちがふつふつと湧いてくる。
夕方、もろもろの確認を終え、安東さんと角のイタリアンで乾杯。一足先に竣工祝いをし、あれこれ話し合う。しかし、本当に凱風館はたくさんの関係者の皆さんと対話を重ねて共通認識に立った上で、情熱を共有できたからこそいいものができたと思っているし、感謝している。この場をお借りして、本当にありがとうございました。
終電に飛び乗って奈良に帰る。いよいよミラクルスペシャルな週末が始まる。
11月10日(木)
午前中、メールなどの雑務を済ませて、新宿紀伊国屋本店へ。羽鳥書店の企画による出版記念、高山宏『学問はアルス・コンビナトリアというアート』展を覗く。高山先生の書斎が一部再現されていて、貴重な書籍がたくさん並べられていて、まるでご本人の脳の中を垣間見たように感じる。直筆原稿もあり、楽しませてもらった。
昼、日大船橋校にてベーシック建築デザインの授業。学生たちにとっての初めての設計課題。図面と模型を見ながらのエスキース。あれこれとアドバイスをし、空間を考えていく楽しみを感じてもらえるように努力する。3週間ぶりの授業だったが、みっちりと3コマ。
夜、事務所にクライアント夫妻が来所。リノベーション・プロジェクトである「三宿テラス」の打ち合わせ。見積り、工程、設計について話し合う。来月から着工できるように細かいポイントを整理して、見積りと予算、デザインを最終確認。凱風館の完成を間近に控え、こうして次のプロジェクトが動き出す。
深夜、メールなどの雑務とほぼ日の原稿を少し書いて、13日のプレゼンも準備する。あれこれと作業をしていたら中途半端な時間になったので、徹夜することにした。
11月9日(水)
午前中、メールなどの雑務とデスクワーク。凱風館の最後の工程チェックなどを進める。昼、入谷のサロンAileにて髪を切る。午後、打ち合わせを2本。
夕方、「三宿テラス」の見積りチェックと今後の進め方など準備。夜、ほぼ日の原稿を進めて、週末のオープンハウスの資料などを準備。
11月8日(火)
午前中、メールなどの雑務。荷造りも程々に、凱風館へ向かう。養生が取れて、少しの工事を残して完成したばかりの室内を一人カメラを片手に撮りまくる。できたてほよほよの空間の中でわくわくしながらの撮影。現場監督さんとあれこれ打ち合わせして、帰路につく。
今回、2週間もの間、関西にどっぷりいることで凱風館の仕上げ工事に立ち会うことが出来、門や外構までしっかりと詰めてデザインすることが出来た。いよいよ12日のオープンハウスを待つばかり。久しぶりの東京は、何だか違和感を覚える程しんとしていた。
たまったメールの返信や、ホームページの更新作業を進める。
11月7日(月)
午前中、凱風館にて山田脩二さんと外構の瓦工事を進める。玄関に続き、敷き瓦をあれこれ設置して、個性溢れる路地が完成した。そこには六甲の山々が立ち表れ、瀬戸内海の波が表現されている。いやはや、何とも見たことないものが出来上がった。内部の工事もチェック。山本浩二画伯の絵画をかけるために壁に絵掛けを取り付けていく。植栽も現場に届き、建築のみならず、柔らかい植物が空間に埋められていく。漆喰壁との相性が抜群のカエデの木に気分が高揚する。
午後、羽鳥書店の羽鳥さんと伊東女史が凱風館を見に来てくれた。お二人をご案内し、僕の考えてきたこと、出来上がった空間を体験してもらう。床の養生シートも剥がされて、いよいよ実際の空間が感じられる状態になった。雑誌の取材で近くまで来ていた内田先生も現場に寄られて、完成したばかりの凱風館を見てもらう。東京からリノベーション物件のクライアントで大学時代の後輩も来てくれて、凱風館をご案内。こうして人と人のご縁が生まれて、建築家は仕事で答えていくしかない。これからも邁進して頑張らねば。
夜、帰宅して、食事に風呂でばたんきゅ。爆睡。
11月6日(日)
午前中、メールなどの雑務。オープンハウスにお申し込み頂いた300人強の対応に追われる。昼、京都の宇治に出向いて、平等院鳳凰堂を見る。天気ももってくれて、曇り空の中、何とも風情のある建築を見ながら、時間に耐える建築の強度について考える。雲に乗った阿弥陀たちが印象に残る。強烈な装飾性が千年近くも前から空間を彩っていたことに驚嘆する。
夕方、大阪で友人たちとフットサルをする。サッカーは見るのが専門で、やったことは高校生の体育以来であったが、大変楽しい時間を過ごした。マラソンから1週間が経って、久しぶりの運動だったが、ランニングのそれとは異質なもので、ひどい筋肉痛と腰痛を発症する。とほほ。
11月5日(土)
朝から凱風館にて西面の路地の土間に山田脩二さんが瓦をモルタルの上にはめ込んで、並べていく。内部の木工事の最終チェックと塗装の修復など。午後、雨がきつくなってきて、外構の工事は取りやめる。夕方、監督さんと工程を確認していよいよ、幾つかの項目だけとなった。来週はオープンハウス。なんとかまとまりそうで一安心。
夜、「ほぼ日」の原稿をチェックバックして送信。読書して早々に寝て、連日の疲れを取る。ぐっすり寝ても寝たりないほど、疲労が蓄積しているが充実した日々が続いている。
11月4日(金)
六時半起きで、いつもより早く凱風館に行く。淡路島からトラックいっぱいの瓦が到着し、外部に瓦2000枚の塀をつくる。汗をかきながら、脩二さんと一緒に作業する。夕方、内田先生と打ち合わせをし、お稽古をまた見学させてもらう。夜、インターホンのデータなどを送信し、ほぼ日の原稿を進める。
11月3日(木)
今日は文化の日。午前中、メールなどの雑務を済ませて、凱風館へ。あれこれと細かい打ち合わせ。外部の洗い出しの壁も綺麗に黒くなりました。美しい。基本的には書斎のベンチの仕上げ方と工程管理のことについて。いよいよクライマックスだ。
午後、西宮北口の兵庫県立文化芸術センター。佐渡裕指揮のDSOのコンサートを聴く。友人たちも3人(コントラバス奏者、ステージマネージャー、佐渡さんのマネージャー)いて、皆と合流する。ベートーベンの5番に聴きほれる。友人の計らいで、休み時間に控え室にて佐渡さんにご挨拶。ベルリンでも楽屋でお会いし、記念撮影をしてもらったが、じつに魅力的な方で現在設計しているご自宅のお話も伺う。ぜひ、いつか凱風館にもご案内したい。
高揚した気分でコンサートを聴き終えて、コントラバス奏者の高橋徹さんとステマネの友人と一緒に住吉に行って、工事中の凱風館を見てもらう。ベルリン時代から僕がお世話になっているお二人に、帰国して最初の仕事となる凱風館を実際に見てもらうことが出来て大変感慨深い気持ちになる。
11月2日(水)
またまた朝から凱風館。道場のロールスクリーンもばっちり設置され、更衣室ののれんも綺麗に入った。いよいよ夕方、凱風館の初稽古。
昼からは道場で一人っきりになって、寺子屋机の上で「ほぼ日」の原稿を書く。道場の空間の中で、凱風館にまつわる話しを書く。集中して2時間程で6枚書き上げる。山田脩二さんの瓦について。
午後、デッキ工事のチェックと書斎の壁の仕上げ方について打ち合わせ。夕方、続々と甲南合気会の方々が凱風館に到着。みなさん、それぞれ目の瞳を輝かせている。順次道着と袴に着替えて、ピカピカの道場をぞうきんがけする。内田樹師範も登場し、ついに、ついに、道場が使われはじめた。完成した道場の中で道着を着た方々が合気道を始めるのを後ろで見学させてもらう。見ながら、感無量としか言えない気分になる。80畳の道場の空間がいきいきとうごめいている。皆さんの動きも目の輝きも増し、ついにこの瞬間が来たんだなー、と感動する。見てるだけでなくて、僕も合気道がやりたくなった。
2時間の稽古を経て、早速二階に上がっての初宴会。内田先生に「アーキテクトの光嶋君です」と紹介された時に40人ものお弟子さんたちから大変暖かい拍手を頂き、天にも昇る嬉しさと達成感に包まれる。これもすべて内田先生と中島工務店のおかげであり、笑顔が絶えない時間が続く。子供たちが現場のあちこちを走り回って、楽しそうにしているのが、何より凱風館がいい建築になっていることの証拠であり、満足する。奈良に帰る終電まで宴会は続き、内田先生と一緒に最高の杯を交わす。
11月1日(火)
今日も朝から凱風館。ついに放射冷暖房システムのPSが搬入される。250キロもある大きなものが二階の書斎/客間サロンに設置される。空間が一気に引き締まった。寝室とダイニングキッチンにも無事PSが設置された。そんな中、午前中、山本浩二画伯がついに「老松」を完成させる。画伯にとっての大きな仕事が一つ終わりを告げる。実に素晴らしい作品が完成し、道場の空間が能舞台へと変化するための書かせない存在となった。
昼すぎ、歴史家で大阪市立大学准教授の倉方俊輔さんが凱風館を見に来てくださった。SDレビューでも見てもらったので、大変貴重なお言葉を頂く。早稲田大学の先輩でもあるので、いろいろと共通する感覚でお話しできるので勉強になる。
夕方、山本浩二画伯と完成したばかりの「老松」を前にあれこれと談笑。この人がいなければ、本当に何も始まらなかったわけで、感謝しても感謝しても足りない恩人。そして、建築現場に本物の芸術家が日々制作しているという何とも贅沢な、少し異様なまでの緊張感があり、それが立派な作品となって出来上がったのを見ながら、感慨にふける。近くのレストランで画伯と二人で乾杯。普通の生中だが、これほど美味いビールはなかなか味わえない。凱風館のこと、老松のこと、語り出すとエンドレスだが、とにもかくにも、この2年間近く濃密に山本画伯と時間を共にできたことが何より僕のかけがいのない貴重な財産となった。
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