EVERYDAY
NOTES - archive - 2010 december
12月31日(金)
午前中、身支度を済ませて、吹雪く奈良を後にして伊勢に向かう。昼、鳥羽の展望台で太平洋の美しい青色に見入る。うっすらと丸く見えるほど長い地平線もまた見事な風景。夕方、鳥羽の旅館に入り、温泉/食事/温泉の連続に時々読書。難解な『球と迷宮』を読み進める。紅白歌合戦を聴きながら。家族で年越しそばを食して2011年を迎える。
内田樹先生を真似して大晦日恒例の今年一年『重大ニュース』を思うがままに書いてみます。
(1)内田先生が大学を退官されてからの合気道と執筆活動のための拠点である「内田邸/道場」の設計を依頼される。まだ更地だが来春から工事がスタートし、木こりの小林直人さんの杉材や山本浩二画伯の「老松」などたくさんの方々のお力添えを受けて素晴らしい建築にすべく頑張りたい。
(2)桑沢デザイン研究所で森川嘉一朗先生の後任として非常勤講師になる。SD1の「デザイン論」の講義を担当。「旅」をテーマにヨーロッパの都市の建築と美術を紹介。初めての先生業だが、モチベーションが高くて、いきいきした学生たちに僕の方が多くを学ばせてもらった気がする。
(3)ザウアブルッフ・ハットン時代の同僚の結婚式のために久しぶりにスウェーデンに行く。懐かしい友人たちとの再会を果たし、北欧のアーキペラゴの風景を堪能。アスプルンドとレヴェレンツの建築探訪もできた。
(4)ベルリンの眼鏡ブラント、ic!berlinのサングラスのデザインを担当する。ひょんなことからラルフ社長と出逢って意気投合。スケッチを送って、あれよあれよとサンプル作製、メールの行き来を中心に、実物の完成までこぎつける。来年には既に第二弾をデザイン中。
(5)学生時代の親友が新規経営する七里ケ浜にあるヨガスタジオ「青空空間」の内装設計をする。工事をしてもらったのも、学生時代にお世話になった職人さん、河野鐵鋼工業との再会も感無量。オープニングには、黒崎輝男さんもいらして、展示していた僕の銅版画まで買っていただく。
(6)ギャラリー21のチーフ・キュレーター、太田菜穂子さんを中心にアートプロジェクト『Forest Among Us』の立ち上げに参加。来年は、いよいよ具体的にあれこれとムーブメントを起こしたい。
(7)キース・ジャレット「Japan Tour 2010」コンサートを聴く。とろけるような音楽に身を委ねる至福の時。あの時ばかりは、本気で時間が止まってほしいと思った。アンコール二曲目の「Answer Me, My Love」はもはや神の域。
(8)24本の映画を観た。印象に残ったトップ3は、『イングロリアス・バスターズ』(監督:クエンティン・タランティーノ、2009)と『抱擁のかけら』(監督:ペドロ・アルモドバル、2009)、『告白』(監督:中島哲也、2010)
(9)61冊の本を読んだ。印象に残ったトップ3は、『生きのびるための建築』(石山修武、NTT出版、2010)と『移行期的混乱』(平川克美、筑摩書房、2010)、『邪悪なものの鎮め方』(内田樹、バジリコ株式会社、2010)
(10)多くの展覧会に足を運んだ。印象に残ったトップ3は、『ウィリアム・ケントリッジ展』@近代美術館と『クリストとジャンヌ=クロード展』@21_21、『伊藤若冲、アナザーワールド展』@千葉美術館
昨年の今頃、果たして僕はこの上に書いたことの幾つを想像できただろうか?全くを持って想像できないようなドリームプロジェクトが沢山あり、建築家冥利に尽きる。本当に奇跡のような一年だった。それもこれも多くの方々との素晴らしい出逢いがきっかけである。感謝の気持ちで一杯だ。これからも建築のみならず、可能な限り多くの分野とのクロスボーダーな仕事をしたいと思っているので、努力を重ねて精進したい。本年は、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
12月30日(木)
午前中、ゆっくり過ごす。昼、メールなどの雑務。
午後、小学校の時の幼なじみと合流して歯科医院の設計の打ち合わせ。いよいよ具体的にあれこれとヒアリングして、来年から基本設計のスタートを約束する。開放的で暖かい雰囲気あふれる歯科医院を希望。僕の実家からも徒歩圏内、まさか小学生の時に一緒だった友人とこうして20年ぶりに再会して仕事ができるとはこれまた有り難い。来年もエンジン全開だ。
夕方、サティー・マイカル・高の原に行って、『ノルウェイの森』(監督:トラン・アン・ユン、2010)を観る。村上春樹の空前のベストセラーを映像化する壮大な作品。トラン監督ならではのカメラワークと構図の美しさに見入るも、作品としての強度は原作をあまりに何度も読んでいるため、ディテールの抜けが気になってすっきりしない歯がゆさを感じてしまう。早稲田大学理工学部のホワイエが食堂として使われていたのが、何とも懐かしい気分になった。しかし僕も生まれてないが、1960年代後半の学生紛争などの独特な時代の空気感というのを描くのは並大抵の事ではないだろう。一番最後のジョン・レノンの美しい歌声が聴こえてきた時に救われた。
夜、『母なる証明』(監督:ポン・ジュノ、2009)をDVDで借りて観る。こちらは、韓国映画らしいテンポの良さと人間の本質をえぐり出す一本。母子間の愛情の行き来が印象的。これにて今年の映画納め。深夜、『球と迷宮』を読み進める。いよいよ、明日は大晦日。怒濤の一年がゆっくり終わろうとしている。奈良は雪。
12月29日(水)
午前中、アトリエでゆっくり昨日頂いた『沈む日本を愛せますか?』(内田樹×高橋源一郎、ロッキングオン、2010)を読み始める。昼、山本画伯の快気祝いとして武庫荘のイタリアン・トラットリア・グロリアでランチに招待される。浜松支部のメンバーも含めて総勢八名で美味しいイタリアンを食す。麻雀談議から始まって、ワイワイと盛り上がる。締めのドルチェとエスプレッソも最高。
午後、電車に揺られて大きな模型を持って奈良の実家に帰ってくる。U邸の打ち合わせのフィードバック作業。メールなどの雑務。夜、美味しいすき焼きを食して、読書しながら早々に寝てしまう。正月の読書は『球と迷宮』(マンフレッド・タフーリ、PARCO出版、1992)。明日の打ち合わせで仕事納め。
12月28日(火)
午前中、にしむら珈琲にて打ち合わせ。二時間みっちり細かい事項をチェック。続けて、内田樹夫妻と打ち合わせ。外構の門のデザインを模型と一緒に確認し、予算についてのあれこれを話し合う。
昼、甲南麻雀連盟定例会の打ち納め。いつものメンバーに続き、浜松から中学の教員チームも合流。いきなり三連勝という初めて体験。四戦三勝で少しは今までの「負けっぷり」の汚名返上できたか。しかし、丁度昨年のこの「打ち納め」で内田先生を山本画伯に紹介してもらったのがすべての始まり。この一年は本当にジェットコースターイヤーだった。皆さん、本当にありがとうございました。感謝の気持ちを忘れずに精進したい。
夜は、山本画伯の自宅兼アトリエに泊めて頂く。画伯の創作の場であるアトリエが見たかったのでお願いしたら快諾してくれた。うどんと鶏の野菜煮込みの夜食まで作ってもらい、色々と話し込む。壁に貼られたイタリアの新聞やピカソのメゾチント作品、拭き漆の施された美しい天板の机、画伯の近作デッサンなどを見せてもらい気がついたら三時半を過ぎていた。ベットに倒れ込むように寝る。
12月27日(月)
午前中、事務所の大掃除とメールなどの雑務。打ち合わせのプレゼンテーション資料の準備。年越しの身支度も済ませて、品川へ。山本画伯と合流し、新幹線で京都までご一緒する。「老松」の製作についてあれこれと話し合う。近況報告も含めて話し込んでいたらあっという間に着いた。
夜、奈良に着いたらお好み焼きを食す。明日の打ち合わせの準備も程々に寝る。
12月26日(日)
午前中、メールなどの雑務と事務所の大掃除。昼、兄貴家族宅にて一日遅れのクリスマスランチ。近況報告し、甥っこと姪っことワイワイ楽しく遊ぶ。子供達の成長のスピードに驚きつつ、えらくハッピーな気分になる。
午後、大学の先輩建築家平瀬有人さんの設計した住宅YNHオープンハウスに行く。スイスの現代建築のDNAと古谷先生のDNAがブレンドした現代住宅。素材も厳選された潔いデザイン。正方形の開口部がグリッドのシステムの中で少しずつ動き、内部から東京の風景が額縁のように切りとられていた。それを支えているのが開口部廻りのディテールへのこだわり。網戸や窓枠が見えない、壁に穴があいただけという挑戦が印象に残る。お施主さんが引っ越して、内部空間に生活が見えてくるときっとスイスの山小屋が東京に立ち上がったという印象は薄れるのではないだろうか。古谷研の先輩後輩を含め、また早稲田色の強い人たちが集まっていた。平瀬さんとも久方ぶりにお会いし、お話ができた。
夜は、家で中学時代のトロントの仲間と忘年会。気がつけば多くが結婚し、可愛らしいジュニア達を連れて来ていて、さながら保育園の様相を呈していた。それぞれが新しい環境で元気よく幸せで、根幹のところでは中学時代から何も変わっていないことを認識。締めは男性陣でラーメン二郎を食す。食べ納め。
深夜、F1のブリヂストンの撤退をドキュメントした番組を見て感動。影の立役者を超えて、セナ/プロスト/マンセル時代よりF1を見なくなってしまったが見入ってしまう。早速届いた『シュナの旅』(宮崎駿、アニメージュ文庫、1983)を読了。宮崎アニメの原点を見た気がする。さて、マンガ熱も程々に正月はハードな読書を重ねたい。
12月25日(土)
午前中、メールなどの雑務。U邸の減額案の検討をあれこれ整理する。外構のデザインもアップデートして模型を製作。3Dとして立ち上がったら、一気に明確に方向性が見えてきた。
午後、年賀状の住所とコメントを延々書き続ける。深夜になって250枚が完成。自転車に乗って目黒郵便局に投函。残すは、10枚の予備。これで今年の仕事もいよいよ来週の打ち合わせのみ。何だか気持ち良い達成感に溢れる。
『宇宙兄弟』(小山宙哉、講談社)7、8、9、10巻を読む。話に奥行きが出てきて、それぞれのキャラクターのディテールが細かくなっていき、感情移入して読み入ってしまう。多くの人に勧められたマンガだけあって、やはり面白い。
12月24日(金)
午前中、CG関係の仕事の打ち合わせが一本。昼、ときの忘れものギャラリーにてオーナーの綿貫さんに「すまいの設計別冊HOME Portrait vol.3」を差し上げて、近況報告も含めてあれこれご挨拶。午後、アクシスビルB1のテキスタイルショップNUNOにて安東陽子さんと打ち合わせ。ついつい素敵なテキスタイルグッズがあり、自分へのクリスマスプレゼントとしてスカーフを購入。続けて植物性炭素繊維オルガヘキサについて打ち合わせ。キリッとした冬空の下、自転車でよく動き回った。
事務所に戻ってメールなどの雑務とU邸の減額案についての検討を進める。夕方、ロッテルダムから一時帰国中の大学の同期である友人小林恵吾が来所。OMAの話を始め、近況報告もほどほどに新宿に行く。Aプロジェクトの大島さんと合流し、三人で食事。刺身を中心に魚料理を食べながら美味しい日本酒を飲む。建築談義に花が咲く。続けて近くのバーでウィスキーを飲みながら色々と今後の可能性について話し合う。建築家とクライアントの幸福な関係は、実に奥が深い。
深夜、麻布十番に移動して恵吾と飲み直す。こうして同世代の建築家同士で刺激になる良い仕事をして盛り上げたい。日付もまたいで、メリークリスマス!!!
12月23日(木)
天皇誕生日、世間は休日らしいが、僕は普段通り。午前中、デスクワーク。メールで雑誌『HOME Portrait vol.3(扶桑社)』の対談記事の反応が届く。みなよく理解してくれていて嬉しい。昼、U邸の玄関門のデザインをスケッチする。建築との関係性や目線の動きを意識する。
午後、新潮社の編集者、伊熊泰子さんが来所。先週、多摩美図書館見学をした際にスイス人の元同僚を通して知り合ったのがご縁。旅のスケッチブックを見ながら、建築にアート、写真と話がエンドレスに飛ぶ楽しいキャッチボール。共通の友人/知人も多く、是非とも一緒に仕事をしてみたい。
夕方、U邸の見積り減額調整をあれこれ検討し、詳細図のチェック。夜は、終始年賀状の一言コメントと住所書き。銅版画の着色作業やプリントアウトは終えてるのに、流石に250枚というのはなかなかのボリューム。指も疲れて来て深夜三時までやったものの、まだ折り返してもいない。頑張らねば。
12月22日(水)
午前中、メールなどの雑務。見積り関係であれこれ電話する。午後、先日の打ち合わせの議事録を作成して送信。夕方、見積り調整について考える。
夜、ベルリン時代の仲間と鍋をつつきながらの忘年会。みなそれぞれの分野で頑張っていて、どこか共通のフィーリングを持っているから楽しくお酒も進む。近く一緒にプロジェクトを動かそうと約束する。やはりインターナショナルな感覚で物事を考えている人は爽快ですぐにシナジーが起きる。これまた楽しみだ。
早速、桑沢の数人の学生から講評会のメールが届く。エスキースしたいとの意欲的な学生には大いに「YES」と答えたので楽しみだ。こうした素直な反応が一番やりがいのある瞬間ではなかろうか。
12月21日(火)
朝、東京に帰ってくる。トンボ帰りの神戸出張も万事うまくいった。事務所に戻ってメールなどの雑務。そろそろ事務所の大掃除と経理関係の雑務も少しずつやっておかねば。午後、打ち合わせの整理と新しい案件のポイントを整理する。もろもろの作業に追われてたらあっという間に陽が暮れていた。
夕方、桑沢デザイン研究所へ。福島先生の設計課題「小屋と住宅の間」講評会に参加。半年前に毎週レクチャーをしていた面々と懐かしい再会。30人強の学生達の作品を一つ一つクリティックしていく。気がつけば10時を過ぎた長丁場。みんなそれぞれに設計する健全な姿勢が模型にプレゼンボードに見えていて良かった。入学して一年目でここまでまとめるのは流石。しかし、敢えて苦言を呈するとすればまだ自分の我に閉じているというか、小器用にまとまってしまっている傾向が強い。もっと自由にデザインを楽しんでもらいたい。作品の強度を高めるには、思考を重ねて手を動かす。プレゼンの言葉が立派なのにボードの図面や模型からその言葉と関係ないものになっている人が沢山いたように思う。まずは自分の敷地や与条件から読み解いた問題点をスタートラインにする。そこから物語(コンセプト)を論理的に組み立てて、言語化されたストーリーを建築デザインに落とし込む作業を繰り返さないといけない。そのためにも建築をもっと好きになって歴史を勉強する必要がある。また、僕の師匠はよく「模型は潰すためにつくるんだ」と言っていたが、自分の作品に固着しないでどんどんアイデアを試していく思い切りや元気をもってほしい。しかし、何はともあれ皆よく頑張った。年明けの学外講評会に向けてまた奮起してほしい。課題に終わりはない。何度だって納得がいくまでつくり直せば良いのだから。
そのまま居酒屋に流れて、朝まで学生達と飲む。各自とても真剣にあれこれ聞いて来たので、講評会第二ラウンドといった感じ。しかし、それだけ皆が模索しているからこそ努力することができ、しっかりと勉強して大いに飛躍してほしい。また違う課題の講評会にも顔を出したい。こうしてやっと自分が春から毎週顔を合わせていた学生達の作品を見ることが出来て、それぞれの顔と名前だけでなく作風を知ることが出来た。僕のクリティックも皆に何がしか響くことができれば何よりだ。土砂降りの中、始発で帰ってベットに倒れ込む。
12月20日(月)
昼前まで寝て、脱皮したかのように疲れが飛んで、体が軽く元気になる。やはり、ニーチェの本にも書いてあったが、寝る事の大切さを実感。午後から昨日の打ち合わせの整理をもろもろ進めて今後の方針を検討。
夕方、梅田まで出て行って打ち合わせを一本。みっちり二時間。夜は、再度奈良に帰って来て両親とおばあちゃんと家で食事。チキンカツと野菜の天ぷらを食して、深夜のバスで奈良より東京に戻る。今回の出張も無事完了。あと一週間で怒濤の2010年も仕事納め。気持ちよく新年が迎えられるように引き締めてしっかりと頑張りたい。
12月19日(日)
スカッと晴れた冬の朝。大きな模型を持って御影に。いつになく六甲山が遠方に綺麗に見える。少し早く着いたので、にしむら珈琲店で朝食。打ち合わせ事項の最終チェックをし、十時半から内田樹先生夫妻と打ち合わせ。道場の模型を覗き込みながら空間のイメージや能の敷き舞台としての使い方について話し合う。見積リ比較についても報告、細かく検討する。
午後、甲南麻雀連盟定例会。すぐにメンバーが集まり二卓を囲む。何と珍しく、今まで年間一勝しかしてなかったのに、四戦二勝。雀神さまの微笑みを感じながらの楽しい時間。
夜、奈良の実家に帰宅。風呂に入ってベットに倒れ込むように寝る。先週発売になった「すまいの設計別冊HOME Portrait vol.3」に掲載された内田先生との対談記事の反応が幾つか届く。こうしたきっかけを大切に精進したい。
12月18日(土)
午前中、メールなどの雑務。平面詳細図の最終チェックと1/30の道場模型写真撮影。午後は見積り比較書の作成に集中。外構のデザインもまとめて、模型作製。夜、プレゼンテーション資料がやっとすべてまとまる。
新宿から夜行バスで神戸に向かう。『ノルウェーの森』を読み進めるも日頃の寝不足からか、すぐに寝入ってしまう。どこでも寝られるのが特技だが、さすがに大きな模型を持ってのバス乗車はきつかった。
12月17日(金)
朝から早起きして電車を乗り換えて橋本へ。一人旅をしているスイス人の元同僚と合流し、多摩美術大学の図書館を見学。コンクリートという固い材料からなる軽快な連続アーチが緩やかな丘の上にたたずんでいた。とても透明感のある空間で、冬の朝の光が気持ち良く入ってくる。その明快な構造の中にあって、鱗状のカーテンが絶妙な空間の表情を作り出していた。学生達が窓辺で気持ち良さそうに画集を眺めたり、ベンチで寝転んでいたのが、この建築が愛されている何よりの証拠。しかし、先日のピーター・クック氏といい、伊東豊雄氏といい、建築に対する真摯で自由な姿勢が魅力的で楽しい空間を生み出していて深く感動する。
昼、新宿でお世話になっているお施主さんと食事。「すまいの設計別冊HOME Portrait vol.3」を差し上げて、近況報告。来年からまた新しいことを色々とご一緒したい。
午後、NUNOのテキスタイル・コーディネーター・デザイナーの安東陽子さんが来所。今朝見た図書館の印象を述べて、自己紹介。U邸や旅のスケッチ、ドローイングを見ながらあれこれと話し合う。一緒にコラボレーションできるプロジェクトの進め方について相談。安東さんがテキスタイルを建築に取り込むことで「現象」をつくりたいとおっしゃっていたのが胸に刺さる。先日の藤原徹平さんのオープンハウスで知り合ったが、こうした広がりのある繋がりに感謝する。
夕方、U邸の見積り比較を続けて、打ち合わせの資料をつくり込む。夜、恵比寿にて大学時代の友人たちと恒例の忘年会。みんな建築学科を卒業したのに建築をやっていないというのが特徴(もちろん僕以外)。入学して13年が経つが、相変わらずいつ会っても変わってなくてワイワイ盛り上がる最高の仲間。ドローイング『City of Colors-01』(「exhibition」参照)を買ってくれた親友に引き渡し。すごく愛着のある作品だが、飾られる新しい環境でまた大いにその空間で呼吸してほしい。次のドローイングの依頼も受ける。
深夜、メールなどの雑務。いよいよ年の瀬。やることをやって気持ちよく新年を迎えたい。読みたい本もまだ沢山あるけど、読書の時間が削られるのが残念。
12月16日(木)
午前中、赤坂にて『Forest Among Us』の打ち合わせ。新しいことをやっていく大きな挑戦なのでこうしてコアメンバーで話し合うのが一番の収穫。来年はいよいよ具体的なプロジェクトを動かしたい。
昼、U邸の見積り比較と外構のアイデアをスケッチ。メールなどの雑務とデスクワークに追われる。夕方、白井版画工房に行って、先週刷り上げた年賀状を受け取って、早々に帰宅。夜は、年賀状の着色作業とスキャンしたもののプリントアウトを一気に仕上げる。250枚の年賀状が完成。あとは、住所を書いてそれぞれのコメント書き。来週、神戸から帰ってきたら仕上げて、元旦に皆さんのもとに届くようにしたい。
12月15日(水)
午前中、メールなどの雑務と銅版画作品の整理。午後、東京都現代美術館にてトランスフォメーション展を覗く。メタモルフォーシスをテーマにした映像作品や絵画、彫刻作品が並ぶ。その後、チーフキュレーターである長谷川祐子さんと面会。持参した幾つかの幻想都市風景ドローイング・シリーズなどを見てもらう。建築家として平面作品をつくり続けることや今後の発展性について、ものすごく参考になった。作品の質と量を引き続けて上げていきたい。
夕方、INAXギャラリーにてピーター・クック展を見る。アーキグラムの作品群からの進化が強烈なドローイング郡から読み取れて見入る。続けて、京橋にてクック氏の講演会を聴く。イェール・ライズナー女史によるミニレクチャーから始まる。彼女が集めたインタビュー記事を中心にまとめて出版された著書『architecture and beauty』について。その後、壇上にピーター・クック氏が上がる。『Towards a Non-Solid Architecture』と題されて、二時間に渡って話される。日本酒を飲みながら、英国風ユーモアも交えた実にエクサイティングなレクチャー。自分の興味が赴くままにその対象を自由な感覚で建築に還元していくエネルギーは圧巻。哲学じみた堅苦しい理論ではなく、そこで行われる行為に対する想像力の大切さを熱弁。この言葉が氏の建築観を一番よく捉えているのではないだろうか。
" Theater doesn't just have to happen in a Theater!" Peter Cook
建築に対して「フルーツ」や「野菜」といったタームを持ち込み「Friendly Alien」をつくることに、建築家としての希望の光を感じて興奮する。すかさず氏の建築観における「楽観性」についての質問をして、理想と現実の二項対立でなく、相互のコミュニケーションによる「ループ」を大切にとにかく「面白い」建築をつくりたいとのこと。僕も比較するのはおこがましいが、幻想都市風景(「exhibition」)を描き続けていくことに対するささやかな勇気がもらえたようで嬉しくなる。図々しくも懇親会に参加すると伊東豊雄さんの素敵なスピーチから始まった。クック氏ご本人とも挨拶し、イェール女史がAAスクールで僕のボスのマティアス・ザウアブルッフとルイーザ・ハットンと同級生であることなどを知る。ピーター・クック氏の偉大さ、影響力の強度を改めて再確認。短い時間だったがご一緒することができて、大変貴重な経験になった。しかし、到底73歳とは思えないぶっちぎりの貫禄とエネルギー。
深夜、帰ってメールなどの雑務とデスクワーク。今日の講演会についてずっと頭の中で考え続ける。
12月14日(火)
午前中、浅草橋にてCGの仕事の打ち合わせ。プロジェクトのキックオフとしてあれこれ意見を述べる。有意義なものがつくれるように努力したい。
午後、U邸の見積書と終始にらめっこ。それぞれの数字を見ながら、減額案をあれこれ考える。なかなか進まないが、しっかりと検討せねば。
夜、友人達と合流して忘年会。今年は、みんなでワールドカップのサッカーを集まって見たこともあって良く遊んだもんだ。おいしいイタリアンを食べながらワイワイ飲み語る。
12月13日(月)
午前中、メールなどの雑務。ホームページのアーカイビング作業で「WORKS」をブラッシュアップする。U邸の道場の模型を進める。1/30の模型はやはり空間の質らしきがしっかりと立ち上がって仕上げの材料の検討も進む。
午後、見積書の精査作業を進める。それぞれの項目別に比較検討を続ける。夜まで作業するもまだまだ終わらない。急いで神楽坂に行って、スイスから日本に遊びに来ている元同僚と合流する。5週間の旅も残りわずか、一人で北は北海道から南は沖縄まで楽しんで来た。また「友達の友達は友達」ということもあって、ご一緒させてもらった編集者の方々と多くのシンクロが起き、素敵な出逢いであった。
深夜、銅版画に向かって線を彫る。年内のこの一枚を仕上げたいものだ。
12月12日(日)
午前中、メールなどの雑務。U邸の道場の断面模型を本格的に進める。仕上げとの関係が見られるように大きくつくっていく。平面詳細図もチェック。ホームページの「WORKS」に『aosola 青空空間』を更新。
昼から来週の打ち合わせプレゼン資料をまとめていく。午後、見積りの比較検討を再度進める。夜、ic! berlinの次回作についてあれこれ考えてスケッチ。銅版画のアーカイビングも進める。
深夜、目黒川沿いをランニング。全く体が重くなってしまい、すぐにへばってしまう。いかん、いかん。東京マラソンも抽選で外れて、目標がないとなかなか重い腰が上がらないから何とか走る習慣を戻さねば。
12月11日(土)
午前中、メールなどの雑務。今日が締め切り日だったのでU邸の見積り図書が宅配便で続々と届く。各社とても誠意のある綿密な見積りで早速御礼の電話連絡。この場をお借りしてお見積り、本当にありがとうございました。昼、卵焼きをつくったらパサパサだった。早速、見積り比較を進める。
夜、恵比寿にて友人達と小さな忘年会に参加。深夜、『宇宙兄弟』(小山宙哉、講談社)5巻と6巻を読む。話が進むに連れてそれぞれのキャラクターに深味が出て色々と面白く読み込める。
12月10日(金)
午前中、メールなどの雑務。新しい案件のスケッチ。午後、U邸の平面詳細図をチェックしながら、見積り調整ポイントを想定して考える。夕方、安部良アトリエにて新しいコンペの打ち合わせ。
夜、新浦安にて高校時代の友人達と恒例の焼肉忘年会。さすがに卒業して10年以上経つが男子校だったので、みんなで相変わらずの盛り上がり。近況報告も含めてワイワイしながら美味しい焼肉に舌鼓を打つ。同じ教室で勉強したみんなが今ではそれぞれの分野で頑張っていて、大いに刺激になる。
深夜、帰宅して年賀状製作を少し進める。
12月9日(木)
午前中、メールなどの雑務。U邸の外構についての調べものとデザインの検討。見積りについてもあれこれ想定して考える。
午後、来週の打ち合わせのプレゼンテーション資料の準備。年末の大切な打ち合わせになるのでしっかりと準備せねば。夕方、白井版画工房にて年賀状を15枚ほど刷る。インクを詰めて年賀はがきに丹念に刷り続ける。手を真っ黒にして無事完成。来週には乾燥して、着色作業が出来るだろう。
深夜、デスクワークで机のまわりを一気に整理する。読みかけの本やもろもろの資料をアーカイビングする。「断捨離」ということが流行っているようだが、綺麗な机が仕事や製作効率に影響するのは間違いないので、こうした時間も大切だ。『ノルウェーの森』の再読を進めて、寝る。
12月8日(水)
昨日の深夜の冷たい雨から嘘のように晴天。朝から洗濯を済ませて仕事。メールなどの雑務。U邸の平面詳細をチェックし、道場の部分模型をつくりはじめる。サイトのアップデート作業を進めて「WORKS」を更新、ic! berlinと一緒につくったサングラス「Wonder City」アップ。
午後、道場が能舞台に変換した時の「老松」について山本画伯と電話で打ち合わせし、資料をまとめる。壁にあったプロポーションとスケールの検討とチェックバック。その後、外構のアイデアをあれこれスケッチ。
夜、市ヶ谷へ。移動中、iPHONEで宇多田ヒカルのライブをUSTで聴く。ジョンレノンの30回忌に日本の歌姫が活動休止前のライブを生配信することに時代の変化を感じる。新しいミヅマアートギャラリーにて池田学の個展『焦点』オープニング。丹念に描き込まれた大きな絵が池田さんの特徴だが、今回は小さなサイズに挑戦。しかし、圧巻なのはやはりその描写力が紡ぎだす物語は、画面としての迫力を一切弱めることなく存在していた。久しぶりに再会した池田さんと挨拶し、「画面が小さいとアドリブが効かないからかなり考えて描いたんだよね」って言っていたのが印象的。19もの物語が不思議な糸で接続された良質な展覧会。来年から一年間、カナダに行くとのことで、きっとまた深い世界の広がりを獲得するのだろう、今から楽しみだ。
深夜、年賀状製作。いよいよプリントアウト開始。テストを何枚か出して問題ない。近く一気にプリントしよう。映画公開が近づいてきたので『ノルウェーの森』を再読スタート。一体、何度目だろうか。
12月7日(火)
午前中、メールなどの雑務。昼、川越に完成した先輩建築家の住宅を見学し、打ち合わせを少々。夕方、U邸の外構についてスケッチし、来週の打ち合わせ資料の準備を始める。ICベルリンのラルフ社長より連絡があり、デザインしたサングラスのことや今後の展開について年末の来日時に会うことになった。
夜、年賀状の着色バリエーションを二つ完成させて、スキャンしいよいよデータ化も完了。近々プリントアウトを開始したい。深夜、幾つかの本を雑読する。
12月6日(月)
午前中、東工大にて建築法規を教えている郡司氏の依頼で「ドイツでの建築設計と法規」と題してレクチャーをする。学部の二年生に海外で働くことを少しでも身近に感じてもらえるように、ザウアブルッフハットンアーキテクツでの仕事を紹介しながら建築家としての視野を広くもつことの大切さを一時間話す。後半は、中国で働いていた内野智之氏のお話を聴く。中国ならではの大胆な法とのつき合い方も伺えて大変面白かった。授業後、安田幸一先生にご挨拶し、自己紹介をはじめ、少し雑談。海外で働くことやポーラ美術館について興味深いお話を伺う。大学時代の同級生である郡司とこうして再会し、広がりのある関係が築けて実に有り難い。三人でその後打ち上げのランチ。
午後、事務所に戻ってU邸の外構についてリサーチとスケッチを続ける。夕方メールなどの雑務と諸々の電話対応。中谷礼仁先生の「場所と空間/先行形態論」を読み始める。実に鮮明に都市について考えていることが整理されて大変参考になる。
深夜、年賀状の製作。先日刷った銅版画を着色したり、スキャンしたりしてデータ化したもののバリエーションをいくつかつくってみる。200枚以上になるので、準備を始めたい。
12月5日(日)
午前中、三弦茶屋に完成したフジワラテッペーアーキテクツラボの住宅第一弾、オープンハウスに行く。白い壁構造の箱の中を田の字プランでスキップフロアにした住宅で、それぞれの部屋が内部で関係し合い、外部からも開口部によりそれぞれの部屋が少しずつ見えて気配が感じられるようになっていた。南の光を拾うように壁が曲げられて、冬の鋭い光が室内に入ってくる。丁度、テキスタイルコーディネーターの安東陽子さんもいらして、カーテンを取り付けていた。白い空間に柔らかい表情がアクセントとして生活の機能を誘発する。
午後、事務所に戻って仕事。U邸の平面詳細をチェック。明日の東工大でのレクチャーを準備する。あれこれと凝りだしたらなかなか終わらず、スウェーデン人の友人らとブラジル料理をたらふく食して、バーで一杯飲んだ後、戻ってパワポ作りを仕上げる。
12月4日(土)
午前中、東工大のレクチャー準備。鈴木了二さんの『建築零年』に収められた「空地・空洞・空隙」論を講演会のために再読する。
午後、早稲田大学にて池原義郎×鈴木了二『建築の詩情』と題された講演会を聴きに行く。池原先生は82歳になられ、白浜中学校や所沢聖地霊園などの作品について語られた。鈴木先生は、池原先生を恩師/教育者/唯一無二の建築家という三つの側面から話をされて、金刀比羅宮プロジェクトを中心に自作を語られた。最後の対談では、建築の抽象的概念云々でなく「体験」を通した「場所」の魅力が建築家としての原点にあると言われた池原先生の言葉が印象的。
夕方、友人の美容師さんに髪を切ってもらったら、来年いよいよ独立してサロンをオープンしたいとのこと。色々と相談にのり、一緒に良いものをつくれるように約束する。夜、メールなどの雑務とデスクワーク。深夜、『宇宙兄弟』(小山宙哉、講談社)3巻と4巻を読む。宇宙飛行士になるための試験を通して人間としての葛藤がリアルに描かれていて面白い。
12月3日(金)
朝から雨と強風。午前中、メールなどの雑務。U邸の見積りのための対応をあれこれと進める。平面詳細図もチェック。来週からまた部分模型をつくらねば。『アーキテクチャとクラウド』に収められた吉村靖孝さんと塚本由晴さんの対談を再読。
夕方、外苑前のオリエアートギャラリーにてCCハウス展を見て、吉村靖孝さんのレクチャーを聴く。著作権について丁寧に解説され、クリエイティブ・コモンズという考え方を建築にも導入する新しい試みについてのお話。図面公開、配布から自由な変容性を積極的に認めることで建築に関わるあらゆる変数における更なるベストな建築のあり方を模索。建築デザインにおける社会性を取り入れた切り口が印象的。終了後、吉村さんにご挨拶して事務所に戻る。
夜は、終始作業。あっという間に時間が過ぎていく。日中の温かさと打って変わって夜は冬の寒さに戻っていた。
12月2日(木)
午前中、メールなどの雑務。先日黒崎さんを通して知り合った「離島経済新聞」の社長イサモトさんが来所。僕の自己紹介も含め、離島についてもあれこれを話を伺う。同世代として、異分野であるからこそ何か一緒にできたら面白いと思う。離島というのが一つのライフスタイルの提案なんだという印象をもつ。
午後、見積りの進め方や担当者との連絡に追われる。パナソニックの担当者が来所。現況と今後の進め方を確認する。U邸の外構についてスケッチを重ねる。夜、久方ぶりの友人というか大先輩たちと飲む。いよいよ忘年会のシーズン。雨の中帰宅し、ベットに倒れ込む。
12月1日(水)
午前中、メールなどの雑務ともろもろの電話対応。昼、道場の展開図のバリエーションを検討し、資料を送信。質疑応答書もみっちりまとめて、夕方各社へ送信して対応して頂く。
夜、両国のシアターxにて『まっかなおひるね』(高瀬アキ×多和田葉子)を鑑賞。この二人にしかできない魅力的な世界。音楽と文学、ピアノと言葉の幸福な関係が繰り広げられる。高瀬さんのソロピアノに、多和田さんの朗読に、心を奪われる。公演後、多和田さんに挨拶する。ベルリンでお会いした二人とはこの年に一回の公演が再会の場となっていて楽しませてもらった。
深夜、銅板に線を彫り進める。友人のお母様からドローイングの依頼を受ける。学生時代の北海道旅行で一度お会いしているが、しっかり期待に応えられる様な作品に仕上げたい。
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