ARCHIVE

『EVERYDAY NOTES』

●2009年2月

●2009年1月

●2008年12月

●2008年11月

『OPENNING NOTE』

 
 

EVERYDAY NOTES - archive - 2009 march

3月31日(火)
 午前中、メールなどの雑務。昼、トロント時代からの友人とランチをしながらマイホームについての相談を受ける。一緒に机を並べて勉強した十何年来の友人がこうして立派に二児の母になっていると時間の流れを感じ、不思議な思いがする。

 夕方、かなでるきの撮影について打ち合わせ。夜、大学時代からの友人と池袋にある明日館に桜を見に行く。三部咲きだが、ライトアップされていて美しかった。それよりライトの設計による建物の時間に対する強度に共感した。満開になったら又いつか行ってみたい。

 深夜、今週からハワイに一人旅をする友人と合流して近況報告をし、お互いのビジョンについて熱く語り合う。同じ建築学科で勉強し、コンサルタントになった彼からはいつもいい刺激をもらう。しかし、人とよく会った一日となったな。さあ、これからも頑張ろう。

3月30日(月)
 午前中、集中して「プロジェクト30」の着色作業。昼、買ったアボカドが腐っていてショック。気を取り直してうどんを湯がいて食す。午後も筆を握ったまま。途中、気分転換に近所をカメラ片手にお散歩。この時期だからか、普段より人が多く感じた。桜を見ると、どうしても浮かれてしまう。

 夜、「プロジェクト30」の他の準備作業もやりながら、ベルリン工科大×芸大のワークショップについてのメール送信。あっという間に四月になりそうだな。

 深夜は、ジュリエット・グレコのシャンソンに合わせて銅版画を彫る。柔らかい筆先とシャープな針とでは全く手の感覚が違うので面白い。今週中に両方完成させたい。

3月29日(日)
 午前中、天気も良く気持ちがいいのでジャック・ジョンソンをループで流しながらテンションも上がりっぱなしで「プロジェクト30」の着色作業を進める。気の遠くなるような作業もトンネルの先の光が見えてきた感じ。集中して筆を躍らせる。今週中には完成するだろう。

 少し前に見に行った新美術館の加山又造展のカタログが届く。最終日に行ったため売り切れになったのを注文していた。忘れていた頃にこうして届くと何だか二度得した気分になってカタログに見入る。印刷物には本物のエネルギーはないが、造形も着色も美しさも思い出す。

 夜、NHKで『沸騰都市』を観て触発され、都市についての本を拾い読みする。深夜、目黒川沿いをジョギングするも思いのほか寒くてあまり汗もかかなかった。桜もまだ二割といったところか。もうすぐ春だ。もうすぐ四月。

3月28日(土)
 午前中、ゆっくり部屋の掃除。NHKプロフェッショナルで中澤選手を観る。サッカーに対する姿勢がかっこいい。一流のスポーツ選手は、ストイックなところに共通点があることに今更ながら感心する。

 午後、「プロジェクト30」の着色作業を進める。風は冷たいけど、気分転換に散歩して又塗り続ける。少しずつ見えてきたので頑張ろう。夜、一緒にNIDショップをやった友人たちと鍋をつつく。それぞれ近況報告も含め、ワイワイ楽しい時間を過ごす。

3月27日(金)
 午前中、天気も良くて最高の光の中「プロジェクト30」の着色作業。どんどん進めてもうすぐ折り返しが見えてきた。完成するとかなり大きいものなのでワクワクする。普段、スケッチはペンしか使わないので、水彩画というのにもやっと慣れてきた。また新しい感覚を触発されるので今度の旅のスケッチにも着色を試みてみようかな。でもそうすると、水彩セットを持ち歩くのがやはり億劫だな。

 夜、友人の集まりに参加。フランス語が飛び交っていた。フランス語の響きはとてもエレガントで意味が分からなくても耳に優しい言葉。フランス映画が好きな理由の一つは、その言葉のメロディーかもしれない。6年ぶりに高校時代からの友人とも再会し大いに盛り上がる。

3月26日(木)
 午前中、所用で渋谷へ。午後、友人と合流して、オーストラリアから来る友人を成田空港へ迎えにいく。ラグビーをやっているとのことで、スポーツの話で盛り上がる。シドニーに子供のころから交換ホームステイをしていた友人も合流して丸ビルで食事。炭火で沢山お魚を焼いて味噌をつけて食べた。

 深夜、少しでも進めようと「プロジェクト30」の着色作業をやる。

3月25日(水)
 午前中、「プロジェクト30」の着色作業。楽しくて色々と試しながらどんどん進めていく。大変な作業だが、楽しまないとやっている意味がないのでリズムをつくって頑張っていく。読書しては、また着色作業の繰り返し。まだまだ始まったばかりだが、良い具合になってきたので続けたい。

 夕方、散歩しながら筆を追加で買いに行って、着色作業。当分はこの感じでやっていこう。「プロジェクト30」についての他のものも準備する。3週間後には無事完成させねばならぬ。今回の来日でブルーノートには行けなかったのが残念だったので、ミラバッシのピアノを聴きながら深夜まで着色作業をした。

3月24日(火)
 午前中、メールや電話対応。昼、「プロジェクト30」の打ち合わせを一本、そしてプリントアウトされたものを引き取りに行く。良い出来だ。次は、着色作業。テレビでは、WBCの決勝戦。今大会五度目の韓国戦に勝利して大会連覇を達成。韓国の選手の気迫はすさまじい、ヘルメットが割れるほどのスライディングを観たのは初めて。阪神ファンとしては試合を藤川に閉めてほしかったけど、クローザーとしてのダルビッシュも迫力があった。何より今日三安打しているイチローとあの場面で勝負してくれた韓国チーム、そしてもちろん二点タイムリーを打ったイチローに感動した。アジアの野球のレベルの高さを世界に知らしめることができたのは確かだろう。

 『構造デザイン講義』(内藤廣、王国社、2008)を読み終わる。構造を軸にあらゆる材料について歴史的に説いてくれて、自作も語る説得力のある良著だった。最終章で語られた「新しい構造、それは建築的な価値とは無関係なのです。本当の意味での建築的な価値とは、「技術と芸術が結び合ったその時代の精神の現れ」のことです(中略)建築は見せ物ではありません。」に深く共感した。続けて、先日難波先生から頂いた『建築の四層構造』(難波和彦、INAX出版、2009)を読み始める。面白くてあっという間に三章までいった。

 夜、クライアントの方から頂いたグレコさんの深い歌声を聴きながら、早速「プロジェクト30」の着色をスタート。これは、なかなか大変な作業になりそうだ。皆に喜んでもらえるようにコツコツとしっかり頑張らねば。

3月23日(月)
 午前中、NPOのロゴを再びスケッチする。新しいアイディアで集中してやってみる。昼、「プロジェクト30」の準備をじっくり進める。ベルリン工科大×芸大のワークショップについての電話連絡とメールも送信。

 夜、昨日に続いて今度は『ウォーホール・生と死』(監督ジャン=ミシェル・ヴェチェ、2007)をDVDで観る。20世紀を代表する芸術家のドキュメンタリー映画。家族、アシスタント、友人、知人のインタビューを中心にアンディー・ウォーホールの世界を描く。死に対する強烈な恐怖心や母親との関係、お金や名誉、美に対する執着心などを通して彼の深い多面性を感じる。

 深夜、ちょっくら走りに行く。風が強く、空気も冷たいけど気持ち良い汗をかいて寝る。

3月22日(日)
 午前中、メールなどの雑務。昼、ベルリンから遊びに来ていたギリシャ人の友人と帰国前のランチ。この一週間京都や奈良の建築を観てきた話を聞き、特に二月堂からの眺めが印象的とのこと。僕もまた奈良に行きたくなった。またの再会を約束して別れる。誰とどこで会うかによってきっと時間の密度はそれぞれに違ってくるのだろう。だから人は旅を続けるのか。

 午後、新しい銅板に向かい始める。このプロポーションでは五枚目だ。この横長の版がすごく好きなので続けてみようと思う。今日は、エントリーの抽選にもれてしまった東京マラソンの日。風の強い日だ。僕もベルリンマラソンを二度ほど走ったことがあるのでトレーニングを重ねていつか東京も走ってみたい。

 夜、DVD『ファクトリー・ガール』(監督:ジョージ・ヒッケンルーパー、2008)を観る。ウォーホールとデュランを魅了した美女、イーディ・セジウィックのお話。1960年代のニューヨークの空気感はすごかったのだろう。ドキュメンタリーではないが、ノンフィクションに近いので興味深く観た。銀色の内装をするファクトリーが印象的。

3月21日(土)
 午前中、窓を開けっぱなして部屋の掃除と洗濯をする。春の風が心地よく、一日の最高の始まり方。きれいになったところで気持ちよく仕事。ベルリン工科大×芸大のワークショップについて考えて、メールする。その後「プロジェクト30」の準備作業を更に進める。なかなか大変だが来月までにしっかりと仕上げていきたい。

 夕方、青山に行って友人の展示会に顔を出して、カフェでゆっくり読書。夜は、新浦安に行って、高校時代からの友人がオープンした焼肉屋さんで新年会。美味しいお肉を頂き、大いに盛り上がる。気がつけば十五年来の仲で、何でも話せる大事な仲間たち。みんなそれぞれの道で頑張っていていつも刺激をもらう。もう結婚した友人も、今年結婚する友人もいて、しみじみと時間の流れを感じる。

 深夜、『デュシャンは語る』(マルセル・デュシャン、ちくま学芸文庫、1999)を学生時代以来の再読。

3月20日(金)
 午前中、メールなどの雑務。この「everyday notes」を読んでくださっている方からメールを頂いて、一人でやっていく者としてすごく勇気をもらう。こうした縁を大切にしたい。僕も学生時代から石山さんが毎日「世田谷日記」を原稿用紙にモンブランで書いているのを間近で見てきたし、更に難波先生の「青本往来紀」も熱心に読んできたので影響されて、ベルリンに行ってからずっと毎日日記を書くようになった。独立して自分の情報発信基地としてのウェブサイトにて「everyday notes」を書くことも当然だと思ったし実行している。

 午後、雨も止んで、空と雲がみるみる表情を変えて、窓からは春めいた光が入ってくる。何だか気分もなごむ。「プロジェクト30」の次の段階の準備をする。それから、昨日の打ち合わせのNPOのロゴをまたスケッチする。経理関係の書類も少し整理する。

 夜、額装された『スペイン・ドローイング』を持ってクライアント夫妻の家にて引渡しのディナー。心を込めて描いたし、毎日事務所にあって眺めていたので、手放すのが寂しいが喜んでもらえたのでこっちも嬉しくなる。スペイン好きの夫妻は、パエリアを中心にスペイン料理をつくってくれた。これからも更に頑張りたい。最高に美味しい料理に素敵なワインも頂いてすっかり酔ってしまうも、帰り際、山手線が人身事故で止まってしまい新宿で四十分近く待たされて酔いも覚めるが、倒れこむように寝る。

3月19日(木)
 午前中、靴職人の学校に行っている友人の卒業制作展を見に浅草へ。すごく個性のある靴がたくさんあって見ごたえのある展示会だった。来月から靴デザイナーとしてやっていくとのことで、自分のやりたいことをみつけて見事に転身してみせた友人の達成感が伝わってきてエネルギーをもらった。

 午後、印刷屋さんにて紙の決定とデータチェック。無事、「プロジェクト30」が進み始めている。ベルリン工科大×芸大のワークショップ準備のため資料集め。ワンセグでキューバ戦に勝ったことを知る。夕方、NPOのロゴについて打ち合わせ。やりたいことを追求してやっている人にはすごく共感するので、一緒に何か頑張りたい。

 夜、テンションを上げるため目黒川沿いをジョギング。気持ちよい汗をかきながら、もう少ししたらこのランニングも桜を見ながらできるのだろうかと考える。深夜、読書して寝る

3月18日(水)
 午前中、「プロジェクト30」のドローイングをデジタル化する作業を進める。分割してきれいにプリントアウトできるように準備する。天気が良くて何とも春の香りがした一日だった。

 夜、NIDショップを一緒にデザインした友人と飲みにいく。彼の結婚をフィンアンセと一緒に祝う。

3月17日(火)
 午前中、メールなどの雑務。昼、東大へ。プリンストン大学とのシンポジウムを聞きに行く。6時間の長丁場。前半は、日本サイドが丹下さんの東京計画を中心に60年代からメタボリズムを語り、後半は、アメリカサイドが都市をテーマに批評家と建築家がプロジェクトを発表。何か深い議論が展開されたというよりは、世代も国籍も違ったいろいろなパネラーから断片的な思考のきっかけを沢山与えられたシンポジウムだった。メタボリズムの捉え方と今後の可能性について、阿部仁史さんの都市そのものが大きな家になるという「メガハウス」というプロジェクトなどが印象的。あと、やはり英語という言語は日本語よりもダイレクトで議論しやすいということを再確認。

 夜、「プロジェクト30」のドローイングを完成させる。ここからの作業が大変。プリントアウトして着色せねばならぬ。しっかりとこのプロジェクトを進めて、近い内にこのサイトでも公開したい。

 テレビをつけたら高校時代から応援しているボクサー、辰吉 丈一郎のドキュメンタリーがやっていて画面に釘付けになる。とにかくかっこいい。これだけストレートでストイックな人をみたことがあるだろうか。かっこいい。

3月16日(月)
 五時起床。WBC日本対キューバ戦を観る。松坂が絶妙なピッチングをし、野手がしっかりと守って打つ。ミスのない理想的な野球が展開され気がついたら6-0と快勝。次は、三度目の日韓戦。今大会の正念場だろう、しっかり応援したい。

 午前中、机の上を整理して洗濯物をする。昼、「プロジェクト30」のドローイングをして、午後、印刷屋さんにて紙の種類や印刷方法についての打ち合わせ。紙のサンプルをもらい、帰宅。ベルリン工科大×芸大のワークショップについてあれこれ考える。メール送信。

 夜、何冊かの本をいろいろと拾い読みし、思いついたアイディアをスケッチする。さすがに眠くなってきたので早々と寝てしまう。

3月15日(日)
 午前中、ベルリンから遊びに来ているギリシャ人の友人と会って表参道を歩きながらの現代建築ツアー。伊東さんの建築が気になるらしい。久しぶりの再会で、時間を忘れて近況や思い出話を話し込む。天気も良く、春を感じた良い一日。友人に東京を感じる方法として、いつものように「山手線を最前列に乗って一周すること」と「六本木ヒルズの最上階に上ること」を勧める。

 夕方、「プロジェクト30」のためのドローイングを集中して描く。いい具合に密度が出てきたのでこの調子で進めたい。深夜、読書しながら寝る。3月も折り返し。もうすぐ桜が咲く季節。

3月14日(土)
 午前中、「プロジェクト30」のためのドローイングをする。今までと違って、着色することを意識して描き進める。昼、難波和彦先生設計「箱の家131」のオープンハウスに行く。少し早く着いたので周辺を散策していたら洗足には個性的な住宅がたくさんあった。「箱の家131」は、その密集した住宅地の中、コンパクトなボリュームをつくり、スキップフロアで有効スペースを最大限生み出していた。家具が入ってなかったので生活感はなかったが、この五層の空間がどのように使われていくか想像しながら、一室空間として家全体でなんとなくそれぞれの気配らしきものを感じながら生活できるのではないかと思った。難波先生にも挨拶し、鈴木先生のレクチャーの際に渡しそびれたドローイングブックを差し上げる。

 そのまま東大へ。北欧建築・デザイン協会主催の内藤廣講演会『アアルトが教えてくれたもの』を聴く。卒業式で内藤さんのお話を聞いて以来だったと思うが、「フォルムからスペースへ、内から外へ」という二本の軸で話されて、すごく重い言葉が沢山あり考えさせられた。印象的だったのは、「三十代でカーン、四十代でアアルト、五十代でウツソンの建築に出会った」ということや、「建築家の言葉は閉じていて、社会では通じない」という批判だった。帰りの電車で引き続き『構造デザイン講義』を読み進めていたら、講演会のすぐ後ということもあって肉声のごとく内容がすごく響いてきた。

 夜、昨日のカレーを温めてメンチカツと一緒に食す。ゆっくり読書。深夜、少しドローイングを進める。BGMは、クライアントの方から頂いたばかりの東京バッハ・モーツァルト・オーケストラによるフルート協奏曲。

3月13日(金)
 午前中、新しい紙とペンを買いに行く。途中、駅前で自転車のチューンアップ。そのまま、タリーズ・コーヒーで「プロジェクト30」のドローイングを開始。場所を変えたせいか、昨日と違って、ぐいぐい線が進んでいく。iPODでキース・ジャレットのピアノソロをループで聴きながら流れに乗って描いていたら、三時間が経過していた。買ったばかりのペン先もくたびれていたが、三本買ったので心配なし。うまくこのまま進ませたい。

 夕方、尾山台増築計画のスケッチ。目黒の近くまで来たという大学時代の友人が突然の来所。彼は、世界一周の旅からすこし前に帰ってきて、来月から又中国で働くとのこと。相変わらず元気そうで何より。久しぶりの再会だったので、旅の話を中心にスケッチを見ながら色々と語り合った。彼ともいつか一緒に何かできると信じたい。

 夜、カレーを煮込んで食べる。明日の講演会の予習のため『構造デザイン講義』(内藤廣、王国社、2008)を読み始める。「デザイン」を「技術」と「場所」、「時間」の「翻訳」として説明していた箇所にとても共感したし、それをまた「構造」とつなぎ合わせて論を進めていて面白い。じっくりと読み進めたい。深夜、外では風がびゅんびゅん吹いている。

3月12日(木)
 午前中、尾山台増築計画のスケッチを少し。気持ちの良い光が窓から差すので「プロジェクト30」のドローイングを描き始める。なかなか納得のいく線が出てこない。午後、印刷屋さんにて打ち合わせ。紙もいい具合の厚みが見つからず苦戦。色々試してしっかりと解決策をみつけたい。

 夕方、白井版画工房にて銅版画。小作を二つアクアチント作業していたら時間がかかり、いつもより90分も延長してやっとのことで二枚の試し刷りが完成。とても繊細な作業なので細かいところでうまくいかない部分などの微調整。難しいからこそ楽しいのだろう、続けて頑張ろう。

 深夜、グレン・グールドを聴きながら読書。寝る前にマンチェスター対インテルのサッカー中継を見る。チャンピオンズ・リーグにWBC、世界最高峰のサッカーと野球に睡眠不足の日々を覚悟する。

3月11日(水)
 午前中、メールなどの雑務。昼、原宿NIDショップに顔を出す。オープンして1ヶ月以上が経過、うまくスペースも機能し洋服も売れているとのこと。嬉しい限りだ。午後、『かなでるき』のモデル撮影三日目、最終日。太陽も出て、また違ったニュアンスの写真を撮ることができた。この三日間でバリエーションのある写真群が撮れたので、これでしっかりと『かなでるき』の宣伝活動に利用してもらいたい。初めての体験だったがとても有意義な仕事となった。夕方、「プロジェクト30」の準備と打ち合わせを一本。

 夜、連日の渋谷オーチャードホールへ。ベルリン・ドイツ交響楽団のチャリティー・コンサート(指揮:インゴ・メッツマッハー)は実に素晴らしかった。前半のメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、とても優雅な音楽で、弓が絃の上を華麗にダンスするかのようだった。アンコールのバッハのパルティータ第三番も一本のヴァイオリンがあれだけの音を出して人々を魅了するのに心が動く。しかし、なんと言っても圧巻だったのは、後半のブラームス。昨日のベートーベン三番も素晴らしかったけど、今日のブラームス四番、特に第三楽章は、エネルギーをもらった。管楽器と弦楽器のバランスが絶妙。ライブの音楽は、その場限りの一回勝負、「いま、ここ」ということを強く感じる。演奏中の団員さんたちの表情もまた豊かで見ていてやさしい気持ちになる。演奏後、コントラバス奏者の高橋徹さんにまた挨拶して帰宅。

 深夜、コンサートで感じた思いを銅板に向かってぶつける。新しい小作に取り掛かる。『東京の地霊』を読み進める。半分まできた。上野と京都の関係など新鮮な発見ばかりで面白い。

3月10日(火)
 午前中、スイスで働くポーランド人の元同僚よりメール。彼女は、たまたま僕のサイトを見つけたらしく、懐かしくなって連絡してくれた。3年ぶりの連絡で、なんだかベルリンで一緒にプロジェクトを進めていたときの様子が鮮明に記憶の中から浮かび上がってきた。すぐに返信し、昨日つくった銅版画のサイトの英語版もすぐに作成してアップする。

 午後、『かなでるき』のモデル撮影二日目。普段から建築や都市の風景を撮ることに慣れているので人を撮るのは難しいけど、写真が言葉とはまた違ったコミュニケーションであると実感する。太陽も出て、昨日とはまた違った感じに仕上がり、楽しい時間であった。夕方、「プロジェクト30」について色々と準備する。

 夜、渋谷オーチャードホールにてベルリン・ドイツ交響楽団のチャリティー・コンサートへ。ベルリン時代からの友人で大変お世話になったコントラバス奏者の高橋徹さんと一年ぶりの再会。コンサートの後だというのに、いつになくエネルギッシュ。東京で会うのは初めてで、渋谷で食事をして、新宿でラーメンを食べて、戸越銀座でウィスキーを頂く。一緒にコンサートを聴いた共通の友人と美味しいお酒を飲みに連れて行ってもらう。ベルリンを思い出しながらお互いの近況を語った。最高に濃密な素敵な時間だった。明け方帰宅して、倒れこむように寝る。

3月9日(月)
 午前中、髪を切る。昼、原宿にて友人デザイナーの依頼で『かなでるき』のモデル撮影一日目。『かなでるき』とは、iPodなどのイヤホンのコードにつけるオシャレアイテム。カメラ好きがこうして仕事になると不思議な気持ちだけど、楽しい経験になる。挑戦する気持ちで、何でもやるしかない。

 午後、経理関係の書類をまとめる。それから銅版画シリーズを『Landscape at Night』と名づけてホームページに公開するための作業。こうして公開することでまた何かに繋がることを信じたい。

 夜、テレビでWBC日韓戦を見る。あれだけのメンバーでやる野球は最高に面白い。両チーム共に闘志むき出しの真剣勝負。これぞエンターテーメント。僕も少年野球でキャッチャーをしていたので、城島の守備が抜群に光っていた。負けはしたが、緊張感のある締まった見事な試合だった。次にアメリカやドミニカ共和国、キューバと対戦したらどうなるんだろうか。楽しみだ。

 買ったまま本棚で眠っていた『東京の地霊』(鈴木博之、2009、ちくま学芸文庫)を読み始める。BGMは、最近よく聴くミラバッシ・トリオ。今月末のブルーノートのライブに行きたい。

3月8日(日)
 午前中、メールなどの雑務。散歩して本屋で立ち読み。午後、スペイン・ドローイングの「解説資料」を完成させる。これにて残すは、クライアント夫妻に来週末引き渡すのみとなった。どんな反応をするのか楽しみだ。

 「プロジェクト30」についていろいろと考えてスケッチする。時間がないのでしっかりとできることを企画して達成したい。夜、『ある愛の風景』(監督:スサンネ・ビア、2004)をDVDで観る。前に観た『アフター・ウェディング』同様複雑に物語が絡み合い、人間の本質に向かって映像をつくっていく水準がものすごく高い。同じデンマークのラース・フォン・トリアーとの類似性を感じる。

3月7日(土)
 午前中、天気がいいので気持ちよく掃除と洗濯。昼、スペイン・ドローイングの「解説資料」をつくる。もうすぐ完成。午後、銅版画を見たいという方と打ち合わせ。こうして興味をもってくれる人を大切にしたい。銅版画もこのサイトで見られるように努力しよう。

 夕方、尾山台にてクライアント主催の「梅見の会」に参加。素敵な庭に小さな梅の花が咲いていた。一つの小宇宙のごとく、庭でカメラ片手に時間を忘れる。素晴らしい牡蛎を食べながら素敵な集まりだった。みなさんが違った分野で活躍なさっている方々で実に楽しかった。最後は、グレコさんのシャンソンにみんなで聴き入る。極上の時間だ。

 深夜、『一粒の柿の種』(渡辺政隆、岩波書店、2008)を読み始める。先日のNHK『ブックレビュー』で紹介されていて面白そうだったので購入。やはり、面白い。

3月6日(金)
 午前中、雨の中父と合流してBunkamuraにて『ピカソとクレーの生きた時代』展を見る。デュッセルドルフの美術館K20の改修工事のため、たくさんの作品が日本にやってきた展覧会。展示されていたK20のビデオ映像を見て、数年前に見たフランシス・ベーコン展を思い出す。クレーの作品群がやはり見所で、繊細な色使いや大胆な構成などやはりクレーの作品の前ではどうしても足が止まってしまう。

 午後、父を見送り、事務所に戻ってロゴのデザインを修正。「プロジェクト30」について考える。近い内に動き出せるように進めたいし、発表したい。スペイン・ドローイングの「解説資料」も進める。

 夜、テレビでやっていた『幸せのちから』(監督:ガブリエレ・ムッチーノ、2006)を観る。何だか久しぶりにウィル・スミスをスクリーンで見た気がするがとてもマッチした役だった。苦悩する不器用な父親を見事に演じており、幸福論について大いに考えさせられる。息子役を演じたのがまた実の息子というのがまたリアリティーを獲得していた。

3月5日(木)
 午前中、快晴のなか上野公園を歩いて抜けて東京芸大へ。来月予定されているベルリン工科大学とのワークショップについての打ち合わせ。講師にフィリップ・ヴァザールも来るとのことで何か面白いことがしたい。楽しみだ。

 昼、東京ビックサイトにて建築・建材のフェアに行く。すごい規模にたくさんの人、人、人。何だかめまいがした。いろんな最新の材料を見てカタログをもらい、エコをテーマにしているのは現代的だが、印象としては本物の素材というよりイミテーションとしての工業製品が多かった。

 夜、甥の三歳の誕生日。兄家族と出張中の父とで焼肉を食す。甥も姪も相変わらずかわいい笑顔で家族を幸せな気持ちにしてくれる。一歳の姪がついに歩いた。この年齢の子供たちは、日々新しい表情を獲得するかのようにすくすくと成長する。

 深夜、連日の外食に重くなった体を動かしに目黒川沿いを少しランニング。読書して寝る。

3月4日(水)
 午前中、練馬のドガ・カードルに行って額装されたスペイン・ドローイングを受け取りに行く。立派なフレームに入って絵もいきいきとしているようだ。久しぶりに山手通りをひたすら車で走ったら、いよいよ道幅が広げられていて、新しい不思議な風景に出会う。東京の地下はすごいことになっているのであり、道路のような都市のインフラには時間とお金がかかるのだ。

 夕方、出張中の父と合流し、弟と三人で食事。五人家族だと組み合わせパターンは沢山あるが、こうして弟と三人で会うというのは初めてだった。何だかベルリン時代の父との二人旅を思い出す。美味しい食事で会話も弾むスローフード。気がついたら三時間たっていた。

3月3日(火)
 午前中、メールなどの雑務。昼、スペイン・ドローイングの「解説資料」を一枚仕上げる。全体の説明は終わったので、次は個々のスケッチのストーリをまとめよう。

 午後、ベルリン時代の友人からホームページとロゴの相談。念願のNPOを立ち上げた友人と意見交換し、ロゴのデザインをすることになった。新しい挑戦だ、全力でやってみよう。夕方、早速白紙の紙にあれこれとスケッチする。3時間ほどで一つのロゴが完成し、第一案としてメールで送信する。気に入ってくれるだろうか。

 夜、季節外れの雪が降る中、弟が上京。元気そうだ。ラーメンを一緒に食して近況報告。深夜、読書して寝る。

3月2日(月)
 午前中、経理関係の書類をまとめる。経費などの数字を計算し、決算書と申告書を作成する。久しぶりの快晴の中、自転車で品川税務署まで提出。風はまだ冷たかった。

 午後、新国立美術館にて『加山又造展』を観る。最終日ということもあってか大盛況。初期の動物から風景画まで変化し続ける絵画のスタイルに驚きながら観入る。シルクスクリーンの手法も取り入れた女性像を描いた作品群は迫力満点で、ベルリンのカフェにあるヘルムート・ニュートンの特大裸婦写真を思い出した。カタログは売り切れで郵送してもらうように注文した。その後、原宿で学生時代からの親友デザイナーと近況報告。色々とまた新しいアイディアが浮かぶ。刺激をもらったので頑張らねば。

 夜、カサンドラ・ウィルソンの歌を聴きながら、また銅板に向かう。読書して寝る。

3月1日(日)
 午前中、ゆっくりする。午後から新しい銅板に線を彫っていく。気分転換にカメラ片手に目黒川沿いをぶらぶらする。あんまり天気はよくなかったけど、写真散歩を楽しめた。

 『生き方の原則』(デヴィット・ソロー、文遊社、2007)を読み終える。ソローの軸がぶれない話を読みながら、森の生活、現代人の生活のあり方についていろいろと考えさせられる。最近観たチェやカミーユ・クローデルの映画と同じように生きることの意味を問われるような本だった。

 深夜、同じ研究室でお世話になった先輩の坂口さんがNHKの『週刊ブックレビュー』に出演していた。面白そうな本がたくさん紹介されたのでぜひ読んでみたい。

 

 

▲ go to top of the page

 


TOP