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『EVERYDAY NOTES』

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『OPENNING NOTE』

 
 

EVERYDAY NOTES - archive - 2011 september

9月30日(金)
 徹夜で始発の新幹線に飛び乗る。午前中、外壁の左官工事を確認。内田先生夫妻が現場に登場。今日は先生の61歳のお誕生日。まずは畳の仕上がりをチェック。すぐに受け身などをとられて確認。い草の香りも気に入られたようで、道場全体に畳が敷かれるとどうなるか楽しみだ。続けて能舞台の檜を確認し、寺子屋机と雀卓(ちゃぶ台)のサンプルもチェック。設備機器と照明の打ち合わせの後、道場の細かい使い方についても打ち合わせ。

 昼、芸術新潮の前田さんが現場に来られて、インタビュー取材。大変面白い話を聞くことが出来た。そのまま電車に乗って大阪へ。内田先生をSDレビュー展に案内する。14組の建築作品を一つ一つ見ながら楽しく意見交換。それから前田さんと喫茶店で打ち合わせ。

 夜、友人夫妻宅でたこ焼きパーティーにお呼ばれして、ワイワイ盛り上がる。筑前煮もたいへん美味しかった。こうした同世代の友人が関西にも出来て大変嬉しい。深夜、奈良の実家に帰ってバタンキュ。今日でついに「ほぼ日」の『みんなの家。』の連載も第11回まできた。引き続きよろしくお願いします。

9月29日(木)
 午前中メールなどの雑務。見積りの調整など電話対応。昼、日大船橋校舎へ。ベーシック建築デザインの後期授業開始。ついに創作課題が始まったので、みなのびのびと発想して頑張ってもらいたい。しかし、初めてのエスキースを経て、戸惑いを感じている学生も多いようだ。コンセプトであったり、エスキースするということ自体にまだ理解が難しいようだ。

 夜、森下へ行ってARICAの公演『LOVE GAME LOVE』を観に行く。安藤朋子さんの周りにつくられる独特な空気に見入る。舞台装置がシーソーということもあって、行ったり来たりする反復の中にある種の無常観が印象に残る。また暗転している間が絶妙で、パッとつけられた照明と安東陽子さんによる衣装デザインが効果的なシークエンスを作り出していた。アフタートークの後、二人のアンドウさんとお話しし、会場を後にする。

 深夜、打ち合わせの準備とまとめてから、目黒川沿いをランニング。「ほぼ日」の原稿を集中して書いていたら東の空が明るくなってきた。結局一睡もしないで事務所を出る。

9月28日(水)
 午前中、メールなどの雑務と現場との電話対応。昼、三宿リノベーションの準備をまとめる。午後、千駄木にある羽鳥書店に行く。ドローイング集についてのキックオフミーティング。今まで描いてきた作品について説明し、作品を見てもらい、作品集の構成について話し合う。実に楽しみなプロジェクトが始動した。

 夜、三宿リノベーションのクライアント夫妻が来所。模型と図面を見ながらの打ち合わせ。ファーストプレゼンは、うまくいって、しっかりと方向性を理解してもらう。時間とお金がタイトな中、しっかりと進められるように考える。近所の沖縄料理を3人で食べて、あれこれまた話し合う。しかし、自分の研究室の後輩ということで、共通認識がある分、面白いことができそうだ。頑張らねば。

9月27日(火)
 午前中、フレーム屋さんが来所、友人の結婚式のためのフレームの打ち合わせ。昼、三宿リノベーションについてプレゼン資料をまとめていく。アイデアを盛り込んでは削ぎ落とす連続で、提案をまとめていく。夕方、今まで描いたドローイングなどを整理してフォリオにまとめていく。

 夜、東京フォーラムにて倉方俊輔さんがUIAに合わせて企画した建築家の玉置順さんと藤原徹平さんの対談を聞きに行く。皆さんと挨拶して帰宅。リノベーションの模型をブラッシュアップ。

 深夜、目黒川沿いをランニングして半身浴。しっかり身体を絞り込む。いよいよ大阪マラソンまで一ヶ月。大丈夫かな~。2年ぶり、4度目のフルマラソンを楽しみたい。

9月26日(月)
 午前中、メールなどの雑務。昼、代官山にて展示していた模型を取りに行って、午後、茅場町の森岡書店に行って、鈴木理策さんの写真展を観に行く。アルセーニー・タルコフスキー詩集『白い、白い日』(エクリ、2011)に収録された写真の展示。とにかく美しい、またどこか無国籍な感覚を秘めた魅力的な写真群が展示されていた。北海道の風景を撮ったものらしいが、タルコフスキーの詩集と一緒になると、突如ロシアの風景にも見える不思議。理策さんともお会いし、ご挨拶と近況報告。

 午後、事務所に戻って仕事。三宿リノベーションを進めて、依頼されたちゃぶ台のデザインのスケッチをする。夜、『ためらいのリアル医療倫理』(岩田健太郎、技術評論社、2011)を読み終わる。内田樹先生をロールモデルということもあって、何だか文体も似ているためか、すごく親近感を覚えるというか、とっても面白く読ませてもらった。白黒の価値観でなく、グレーゾーンのグラデーションの程度でものごとを考える「ためらい」の感覚にも強く共感した。

 深夜、ゆっくりジョギングして、気持ちよい汗をかく。

9月25日(日)
 午前中、メールなどの雑務。SDレビューの搬出のための木箱の準備をし、リノベーションの模型をチェック。昼、凱風館の外構についてあれこれスケッチ。ドローイング集のための作品リストとフォリオの作成。午後、SDレビュー展覧会の最終日へ。兄貴家族を案内。5歳の甥と3歳の姪が会場を走り回る。僕の仕事が「おうちをつくる」ことであることをそれぞれちゃんと認識しているようだ。テキスタイルデザイナーの安東陽子さんも来場して頂き、ご案内。現場とはまた違って、こうした展覧会の発表をみてもらうことも大きな意味をもつ。会場には大学の同級生も来てくれていて再会する。
建築家の成瀬さんとも久しぶりにお会いし、話し込む。SDレビューは、来週から大阪へ巡回する。

 夕方、展示の撤収作業。持ち上げられた模型の屋根を取り外して、持参した大きな木箱に収めて終了。建築が設計できて、模型の木箱が設計できないわけがない。構造用合板を切って、インパクト一つで自作した木箱に模型がスポッと綺麗に入ってくれて一安心。夜は、再度兄貴家族と渋谷で合流し、入選祝いに食事をごちそうになる。目に入れても痛くない可愛い甥っ子と姪っ子に元気をもらう。

 深夜、目黒川沿いを70分走り込む。少しずつ身体も動くようになって来たが、まだまだこれから。エンジンを上げて、大阪を気持ちよく走りたい。読書して寝る。

9月24日(土)
 午前中、メールなどの雑務と電話対応。凱風館での打ち合わせの議事録を作成し、送信する。昼、リノベーションの模型作成スタート。諸々のデスクワーク。凱風館の照明についてあれこれ検討し、資料をまとめる。「ほぼ日」の原稿のチェックバック。塩漬けしたり、編集者の赤もあり、文章が変化していくのを目の当たりにして動的平衡な感覚を強く感じる。文章を書くのは面白い。

 夜、SDレビューの雑誌掲載用データを準備し、集中して一気にレイアウトをまとめる。深夜、目黒川沿いをランニング。涼しくて走り易かったけど、思いのほか筋肉痛が残ってて走れなかった。しかし、9月もあと一週間を切った。いやはや、光陰矢のごとし。残り3ヶ月も全力疾走が続く。

9月23日(金)
 今日は秋分の日。爽やかな秋晴れ。午前中、メールなどの雑務。凱風館の現場とあれこれやりとり。昼、リノベーションのスケッチを進める。午後、イタリアから帰国された山本浩二画伯夫妻をSDレビューの展覧会に案内する。それぞれの14作品を見ながらああだこうだと意見を交わす。凱風館のプレゼンテーションもしっかり見てもらった。その後、松之助カフェでアップルパイを食べながらクリティック。展覧会に作品を出すということが作家にとって何を意味するかについて。実に本質的で真摯な意見を頂き、大変考えさせられた。大事なことは「そぎ落とす」こと。何も具体的なことをどうこう言う批評ではなく、抽象的なレベルでもって、高いハードルを示してもらえるこうした方々に僕は支えられているのを実感する。失敗作をつくれない(つくってはならない)建築という分野においてやっていくことの面白さを再認識した濃厚なお茶タイムであった。

 夜、事務所に帰って仕事。頭を整理し、塩漬けしていた「ほぼ日」原稿を再度ブラッシュアップして送信。続けて、家具デザインについてもあれこれスケッチし、またリノベーションについても考える。深夜、凱風館での打ち合わせについてまとめて議事録を作成する。

9月22日(木)
 朝一の新幹線で帰京。二日間で三度目の新大阪駅。今日はスムーズに東京に帰ることができた。二時間半、車内爆睡。東京は昨日の台風が嘘のような快晴。午前中、メールなどの雑務。昼から模型をもってミッドタウンへ。TOKYO PHOTO 2011の中でいつもお世話になっているGallery21のキュレーター太田菜穂子さんの依頼で写真家・蓮井幹生さんの写真のレイアウトと『詠む写真』と題された17枚の写真をどのような建築空間で見せると面白いかという課題に対して『Wheels of Photography』というプロポーザルを提出し、模型を展示してもらう。

 ブース内のセッティングを手伝い、無事蓮井さんの世界観が立ち上がる。夕方、恵比寿で打ち合わせを一本し、事務所に帰宅。メールなどの雑務と電話対応。あれこれしてたら、再度ミッドタウンへ。TOKYO PHOTOの内覧会へ。会場では、フクヘンこと鈴木さんなどにお会いし、みなさんとご挨拶。写真の多様性を感じる。今年は311もあり、開催が危ぶまれたが無事はじまった。

 深夜、目黒川沿いをランニング。しっかりとペースを確認しながら一時間。もう一ヶ月ちょっとで大阪フルマラソンが控えているので、いよいよ練習量も増やさねば。身体は少しずつ、やっと絞れてきた。

9月21日(水)
 朝起きたら、すっかり斜め降りの雨。台風15号も接近して来ているということで現場行きをキャンセルし、午前中の新幹線で帰京することに。新大阪から乗るも、名古屋で止まってしまう。浜松に上陸した強い台風は豪雨と強風で大きな被害をもたらし、静岡県内が停電したりもした。6時間、本を読みながら「カフェ・新幹線」とか思いながらのんきに過ごしていたが、天気が回復しても一向に動かない様子をみて、新大阪に引き返すことにした。さすがに「ホテル・新幹線」にでもなったら疲れがたまる。素直に引き返し、明日の始発で帰京することにする。

 夜、オリンピック予選のサッカー日本代表戦を見て、早々に寝る。こうした読書以外何もしない日がたまにはあってもいいじゃない、と思った。

9月20日(火)
 朝の新幹線で神戸へ。凱風館の現場であれこれ仕上げ工事をチェック。ついに、ついに、道場の天井が完成。綺麗にヒノキの格子がくみ上げられていて、木の香りが充満する立派な空間になっていた。二階に関しても、木工事が着々と完成系に近づいていてワクワクする。外部の工事は雨のためお休み。しかし、下地のはずのモルタルの精度があまりに高く、これに漆喰が塗り込められるとなると楽しみだ。

 午後、影浦さんが現場を初めて見に来てくれたので、案内する。それから内田樹先生夫妻が登場。設計の打ち合わせに続き、安東陽子さんが来てテキスタイルの打ち合わせ、河井さんが来て植栽の打ち合わせを次々と進めていく。仕上げ工事の段階なので、しっかりと妥協なき進め方をし、まとめあげたい。

 夜、夙川で内田先生夫妻も交えて新婚旅行から帰って来た青木夫妻や昼間現場に来てくれた影浦さんと六人で食事。中華を食べながら、凱風館の話で盛り上がる。「近所のおじさんに怒られる子どもの貸し」の話など面白くてあっという間の3時間だった。それから西宮北口で影浦さんとオフィスのレイアウトについて打ち合わせ。充実の一日。深夜、帰宅して寝る。

9月19日(月)
 午前中、写真展の会場構成と展示模型を進めてアイディアをまとめていく。即興演奏的な進め方で面白いものに仕上がっていく。メールなどの雑務。

 昼、六本木アクシスにてテキスタイルデザイナーの安東陽子さんと打ち合わせ。午後、遅めのランチをご一緒しながら近況報告など。その後、本屋で物色し、カフェでゆっくり読書。夕方、事務所に戻って、明日の出張の準備。リノベーションのスケッチを進める。写真の会場構成の模型もまとめあげる。

 深夜、ランニングに行くも雨に降られて1周で切り上げる。出張の準備をして寝る。

9月18日(日)
 午前中、掃除と洗濯の後、メールなどの雑務。明日は「敬老の日」ということもあり、おばあちゃんと叔父夫婦と一緒に代官山ヒルサイドテラスにてSDレビューの展覧会を案内。「凱風館」のプレゼンを見てもらい、たまたま見に来てくれていた先輩建築家やお世話になっている編集者の方から貴重な意見をもらう。午後、みんなでランチをし、一人で六本木ヒルズのメタボリズム展のシンポジウムを聴きに行く。

 第一回(部)は、栄久庵憲司×神谷宏治×菊竹清訓×槇文彦という生きるメタボリストに対して内藤廣氏がモデレーターとして、当時の話を聞き出し、第二回(部)は、東浩紀×レム・コールハース×御厨貴に対して「メタボリズムという政治」と題して展覧会のキュレーションを手掛け八束はじめ氏が司会進行を勤める。会場にいた磯崎新氏のマルクスを引いて「一度目は悲劇としてあり、二度目は喜劇としてしかあり得ないので、いまメタボリズムを取り上げてシンポジウムをすることはいわば<お笑い番組>であるはずなのに、一切笑いがない。一からやり直した方がいい」という強烈な皮肉を自身の弟子に向かって言って、会場のボルテージが上がる。対して、レムは「メタボリズムをimagination(想像)とcreation(創造)という言葉を使わないで語るとつまらなくなる」と返答。やはり、いまメタボリズムを語る意味合いは現代的文脈で引き出せる教訓や問題定義をこれからの可能性として、各自がリアリティーを持って扱えるかにあるのだろう。とてつもなく難しい宿題と同時にウェイク・アップ・コールをもらった気分。とにかくこの展覧会を近くじっくり見て考えたい。

 深夜、目黒川沿いをランニング。リノベーションについて、あれこれスケッチをし、読書もほどほどに寝る。

9月17日(土)
 午前中、メールなどの雑務とリノベーションのアイディアスケッチ。写真展の会場構成も模型をチェックして進める。

 昼、六本木のツタヤでレム・コールハースの新著『プロジェクト・ジャパン』サイン会。ご本人に会うのは初めてだが、やはり存在感からして人を惹き付ける魅力的な人だった。続けて、東大へ。思えば3月11日の14時46分、僕はこの同じ場所、東大理工学部前のスタバで内藤廣先生の最終講義を聴く前だった。地面が大きく揺れ、僕の脳裏にはニュージーランドの地震(2/22)の悪夢がよみがえり、店を飛び出した。内藤先生はイチョウの木の下で東北への想いを語り、そこから目黒まで歩いたのだった。あれから半年か。

 16時、レム・コールハースのレクチャー。『プロジェクト・ジャパン』を説明しないで、この本を書くことになったモチベーションを語った。現代における建築/建築家の役割に対する落胆がベースにあり、それに対して建築がある種幸福な関係をつくっていた時代を検証しようとしてメタボリズムにたどり着いたと。また「日本人」建築家というブランドが成り立った経緯に対する個人的な興味が強いというところからスタートし、丹下健三のことを中心にさながら歴史の授業の様相を呈する。1時間のレクチャーの後に伊東豊雄氏と八束はじめ氏との対談と質疑応答。半世紀近い過去のムーブメントなのである種のノスタルジーがあることも事実。僕もレムに質問。「あなたが建築を拡大するための運動としてメタボリズムを西洋から見たとすると、僕が日本人建築家として西洋のアーキグラムをそうした建築の拡張として見ることもできると思います。アーキグラムとメタボリズムの共通項や違いはなんでしょうか?」それに対して、レムは自身がまさにアーキグラムのメンバーから教育を受けたことを説明し、彼らがいかに議論や複雑さを嫌い、コンテクストに興味がなかったことを批判した。対してメタボリズムには、建築/建築家が持ち得る「可能性」を感じると応えた。最後に建築家の貝島さんが「あなたは政治家になりたいですか?」という絶妙な質問で幕を閉じる。実に濃厚な2時間半。やはり東大の15号室(階段教室)は独特な知的好奇心を大いに触発する素晴らしい空間であることを再確認し、レムが今日また一つの歴史を塗り替えた。

 深夜、『プロジェクト・ジャパン』を斜め読み。それにしても、いつものレムの本同様、実に多面的な本であることに感心する。テーマが日本建築であるからこそ、なぜこのような深みにたどり着くのに日本人でなくレムだったのだろうかと疑問と皮肉さえ感じる。きっと彼だからできたのだろうけど、何だか悔しい。半時間ほどランニングし、大粒の汗をかいてぐっすり寝る。明日も森ビルでメタボリズムのシンポジウム。今週末は完全にレム祭り。

9月16日(金)
 午前中、メールなどの雑務と電話対応。昼、写真の会場構成について、あれこれスケッチし、模型で検討。リノベーションについても平面図を整理していく。夕方、代官山へ。SDレビューにて、隈事務所の藤原さんと日建設計の山崎さんを案内する。さすがにプロとの会話は最高に刺激的。こうした対話/批評を通して更に成長したい。貴重なご意見を幾つももらった。

 夜は、原宿にて「ほぼ日」連載『みんなの家。』のメンバー全員が揃って、連載スタートのお祝いと打ち上げ。予約されたイタリアン・レストランが何と僕が17歳の高校生の時、穂積先生とランチをして進路相談をしたレストランで、15年ぶりに来たことになるという偶然。大変美味しい料理とワインに舌鼓を打つ。まだまだ連載も始まったばかりだが、これからも引き続き頑張りたい。

9月15日(木)
 午前中メールなどの雑務と電話対応。三宿のリノベーションのアイディアをあれこれスケッチ。既存の枠組みからいかに発想を自由にして、更にリアリティーのある状態で設計できるかが鍵となる。軸となるコンセプトを整理せねばならない。午後もリノベーションのスケッチを続ける。写真展のレイアウトについても模型を使ってスタディーを進める。凱風館の家具などの図面をチェックし、現場レポートを作成。

 夜、神奈川芸術劇場に行く。ドリフターズ・サマースクール公演『港のスペクタクル』パフォーマンスを観賞。ダンス/ファッション/建築のクロスボーダーなワークショップから作品を作っていくというもの。明確な軸があるわけではないからこそ新しい状態と不安定さが同居した面白い作品となっていた。ベルリンに住んでいた時によく観に行ったピナ・バウシュやサシャ・ヴァルツに似たタンツテアターを思わせた。途中で大きな布の中で踊るシーンやストロボの中で踊るシーンなどが脳裏に残る。新しいレイアーとして「音楽」という要素もあると更なる相乗効果があるのでは。アフタートークではチェルフィッチュ主宰の岡田利規さんと舞踏家の山田うんさんがお話する。岡田さんの「表層的」という文脈と「プロセス」や「世界との会話」という言葉を使って感想と批評を語られたのが印象的。

 深夜、目黒川沿いをランニング。小出監督流、チェンジ・オブ・ペースを取り入れて走ったら汗だくになった。もう6週間後には大阪の街を颯爽と駆け抜けたい。しかし、身体がまだまだだな。

9月14日(水)
 午前中、メールなどの雑務もほどほどに、凱風館の現場へ。塗装屋さんと色見本を確認しながらの打ち合わせ。内部の壁の仕上げについてもあれこれチェック。多様な素材を使い込み、密度の濃い空間になっている。

 昼過ぎの新幹線で帰京。車内『メタボリズム・ネクサス』(八束はじめ、オーム社、2011)を斜め読み。事務所に戻ってメールなどの雑務。夕方、ヒルサイドテラスにてSDレビュー2011入選展のオープニングに参加。審査員の隈さんや金田さんともご挨拶。僕の母校(早稲田本庄)の設計者である穂積先生と再会。高校三年生の時に建築学部に入ると決めた時にご挨拶に行って以来、お目にかかることができ、凱風館の展示を見てもらう。お世話になっているAプロの大島さんやアルテスパブリッシングの鈴木さんに羽鳥書店の羽鳥さんらも来て頂き、ご案内する。建築家の安部良さんも見えて、久しぶりの近況報告。現場が仕上げ段階であるのを伝えると「最後の最後でずっこけるなよ!」という言葉をもらう。また模型を作ってくれた桑沢の学生たちもたくさん見えて嬉しい気持ちになる。その他にも写真家や編集者の方々との新しい出逢いもあった。門脇さんや倉方さんともご挨拶し、そのまま恵比寿で打ち上げの飲み会。メジロスタジオの方々などとワイワイ建築談義に華が咲く。同業者の友人が極端に少ない僕にとってこうした会は珍しく、大変刺激的で楽しく夜が更ける。こうしてまた貴重な体験をした長い一日が終わる。

 代官山でSDレビューの展覧会がいよいよ始まりました。今年は30周年記念大会ということで土曜日にはシンポジウムなども企画されています。詳細はこちら。月末には大阪にも行きます。中之島にあるほたるまちキャンパスです。みなさん、お近くにお越こしの際はぜひ見にきて下さい。

9月13日(火)
 朝一の新幹線で神戸へ。凱風館の現場であれこれ打ち合わせ。2つのキッチンの設置工事が進む。内部の仕上げ工事のディテールを確認しながら、細かい指示をする。外壁もいよいよ井上左官職が現場入り。丁寧な仕事ぶりに見入る。井上さんが鏝(こて)を手にしたときの動きが実に美しい。モルタルと左官工事がはじまったことで現場に水がつかわれるようになってきた。

 午後、植栽の打ち合わせ。先日のコンペの結果や背景を再度説明した上で、これからの進め方について話し合う。実直な提案だったので大きな問題もなく、新しい息吹を凱風館に吹かせてもらいたい。小さいけれどもいきいきした自然な庭をつくってもらえそうで楽しみだ。夕方には綺麗なジャガー・グリーンと木目の美しい2つのキッチンも完成した。

 夜は食事もそこそこに、倒れ込むように寝る。

9月12日(月)
 午前中、SDレビュー2011入選展の搬入のための準備。昼、代官山ヒルサイドテラスF棟へ。模型とパネルをセッティング。1/30模型と1/100模型を2つ。それにパネルを3つ。搬入と設置を終えると、30年間このSDレビュー展を撮影してきた写真家の堀内広治氏に展示物の撮影をしてもらう。ライティングなどその場で決めてもらい、無事終了。明後日の水曜日から展覧会がスタートする。凱風館を初めて見てもらうために納得のいく展示に仕上がった。ぜひ多くの人に脚を運んでもらいたい。

 夜、ホームページの更新作業。『WORKS』に会場構成を担当した『ROSES』をアップ。これも急に依頼され、あっという間に終わった印象。でもみなボランティア(プロボノ)でやっているため思い入れが強く、印象深い展示になった。

 深夜、出張の準備をしたり、メールなどの雑務。リノベーションのスケッチを始めたら寝られなくなって、気がつけば空が明るくなっていた。

9月11日(日)
 ニューヨークのWTCをはじめアメリカで起こった同時多発テロから10年が経った。また、東北を襲った東日本大震災から半年が経った。2つの大事件は多くの人に多大な影響を与えた。しかり、時間の感覚は大変不思議なもの。共にすっごく昔のように思う。10年前は大学院生でニュースステーションの放送を見ていて信じられない光景に画面に釘付けになり、アメリカ勤務から帰国したばかりの父親に電話したのを覚えている。対して、半年前は建築家の内藤廣先生の最終講義を聴きに東京大学に行って、キャンセルになり目黒まで友人2人と夜な夜な歩いて帰った。復興は思うように進んでいないと口にするのは簡単だが、被災者に取っての震災は未だ続いており、きっと我々にできることもまだたくさんあるだろう。とにもかくにもこの2つの事件を同列に語ることはできないが、絶対に忘却されてはならない事件であることだけは間違いない。黙祷。

 午前中、メールなどの雑務とSDレビュー入選展のための模型を最終仕上げる。1/30模型なのでなかなか手強いがやっと完成に近づいていく。最後に人間を模型の中に配置していく。合気道をやっている人から寺子屋で勉強する人、能を舞う人、麻雀をする人などなど沢山いれていくと、模型はますますいきいきしてきた。ホームページのアップデート作業も進める。

 夕方、リノベーションのスケッチスタート。あれこれ考える。学生有志の課題のエスキースもする。学ぶ力はしっかりと持っているのでできる限り教えたい。夜、模型が完成する。後は明日の搬入/設置のみ。わくわく、どきどき。

 深夜、『ミツバチのささやき』(監督:ビクトル・エリセ、1973)を見る。実にポエティックな映画で、映像も美しい。イノセントな子どもたちのつぶらな瞳が心象的。カタルーニャのまた違った側面を見せてもらったようだ。これは何度も見たくなる映画。

9月10日(土)
 午前中、メールなどの雑務。午後、等々力にて藤原徹平さん設計の住宅のオープンハウスへ。木造軸組を徹底してシンプルに作り、開口部も明快な回廊性というコンセプトをもった家。周辺敷地から編み出した解答を建築にも取り込み、要素を絞り込むこと(職種を減らす)でローコストを実現し、ローコストハウスに見えないところが秀逸。夕方、事務所に戻って打ち合わせ準備。

 夜、マンションリノベーションを依頼してくれたお施主さんと食事。ご夫婦ともにオープンな家で生まれ育ったこともあり、友人知人が多く訪れるような家にしたいとのこと。美味しい手料理を頂きながら深夜まであれこれ話し込む。楽しみなプロジェクトだ。

9月9日(金)
 午前中、メールなどの雑務と電話対応に追われる。午後、凱風館の追加工事リストのチェックと工期についてあれこれ検討、確認。SDレビューの展示についても準備をまとめて、模型のブラッシュアップ作業。

 夕方、写真展の会場構成についてスケッチ。いろんなことを同時に考えて進めることを意識する。デスクワークはなかなか進まない。机に名刺がたまっていく。

 夜、目黒川沿いをランニング。いつもの3ラップ。まだまだ走り込みが足らんけど、できることをコツコツやるだけだね。幾つかの本を雑読して寝る。

9月8日(木)
 午前中、メールなどの雑務と電話対応。SDレビュー入選展のパネルが届き、フレームに収める。納得のいく展示になりそう。

 昼、凱風館の追加工事リストのチェック。ホームページのアップデート作業を進めて、夜のレクチャーの準備。展示予定の模型もどんどん仕上げ段階に入っていく。屋根の見せ方についてあれこれ試行錯誤。

 夜、森岡書店にて先月招待されて行ったドイツ・フェルクリンゲンでのシンポジウムでやったレクチャー『Rearranging Architecture by Nature』の凱旋日本語版をやらせてもらった。会場には25名もの方々がいらして、みなさん「ほぼ日」の連載を読んで来られたり、内田先生のファンだったりして、多様な顔ぶれに身が引き締まる。19時半さっそくスタート。95年の阪神淡路大震災と311の東日本大震災を通して自然の脅威について建築は最大限の安全を目指すべきだが、絶対安全というものはなく、被害の最小限に減害することしかできないのではないか。また人口が減少し、右肩上がりの経済成長が神話となりつつある中でどのようにして新しい価値観をみつけていけるのかという大きな問題提起。その中で地震/津波が起こる我が日本において自然とのつき合い方として3つの切り口を検証。まずは、伊勢神宮の式年遷宮を通して「反復性」について話す。自然との「直接的な寄り沿い方(共生)」としてさしかけ建築/三仏投入堂/笠森寺/清水寺について話し、「時間との関わり(他者への想像力)」として東大寺法華堂について話す。400年の時を経たリノベーション。これを通して時間に耐える建築をつくる方法として、スクラップ&ビルドでない在り方について建築の中に数値化不能な要素も含めて物語を取り込んで情報発信することで愛着のある建築をつくっていくことを提案。具体的な実践として『凱風館』についてのスライドを見せて終了。その後たくさんの質疑応答も含めて、311以後の復興について、共同体の在り方や建築に対する新しいものさしについてみなさんと対話することができて、あっという間の濃厚な2時間であった。

 その後、森岡さんや来て頂いたアルテスパブリッシングの鈴木さん、羽鳥書店の方々を交えて打ち上げ。ドイツからツイッターでレクチャーの内容をつぶやいたのを読んで新潮社の伊熊さんが「私も聴いてみたい、日本でもやってー」ということで森岡書店でのこの会をセッティングして頂き、こうして実現した。この場を借りて感謝したい。また来ると思っていた友人や教え子(一人だけ来てくれた)の姿がなく、「ほぼ日」の読者で初対面の方々に対して自分の考えをぶつけるという貴重な体験ができ、おかげさまで大変有意義な会になりました。本当にありがとうございました。

 また充実した一日となった。流石に帰宅してすぐにベットに倒れ込む。

9月7日(水)
 午前中、講談社の新井さんとカメラマンの方が来所。凱風館の模型写真を撮りに来てくださり、あれこれと話し合う。内田先生の記事に凱風館がしっかりと伝えられるとのことで楽しみだ。

 昼、メールなどの雑務とSDレビューのプレゼンボードの仕上げ。夕方、上野/入谷にあるサロンAILEにて久我さんに髪を切ってもらう。竣工して3ヶ月ちょっと。綺麗に使われていて、コールテン鋼の壁もいい味わいを出していた。

 西新宿の印刷屋にデータを持ち込んでSDレビューのプレゼンボードを入稿し、世界堂に行ってフレームに収めるマットを購入。帰宅して早速スケッチを配置してフレームの中に収める。納得の出来になって一安心。

 深夜はひたすら「ほぼ日」の原稿を書いていた。カサンドラ・ウィルソンを聴きながら集中して10枚ほど書いてメールで送信。

9月6日(火)
 午前中、メールなどの雑務と電話対応。昼、1/30模型を修正して展示の準備を進める。

 午後、SDレビューのためのプレゼンテーションを再考し、スケッチを描き進める。思いついたアイディアを実際に作り込んでいく。ひたすら集中して作業していたらあっという間に夜になっていた。

 夜、三宿のリノベーションの図面化。いろいろとコンセプトを考えていく。建築とリノベーションの間には差異がないように思う。制約はもちろん違う、つまり自由度の問題であり、実現可能な空間の面白さは一緒。しっかりと考えていきたい。こちらは時間とお金との勝負。

 全日本サッカーをウズベキスタン戦を見るも、先制された厳しい闘いとなった。本田と長友がいないのは大きいと再認識。そんな中、一人火を噴いていた岡崎のダイビングヘッドで同点。アウェイで同点は価値があるけど、香川に奮起してもらいたい。

 深夜、ちょっぴりランニング。凱風館の工程についてあれこれ考える。

9月5日(月)
 午前中、のんびり過ごす。富士山に登ろうと思っていたら生憎の天気でキャンセル。ぽっかりと予定が空いたので、これは天からゆっくりしなさい、という声だと認識し、部屋の掃除や洗濯などして過ごす。

 昼、カレーを食したら、本屋さんを物色し、中沢新一さんの『日本の大転換』と思想地図ベータ2を購入。近くのスタバで読書タイム。こんな時間は久しぶり。午後、デスクワークと電話対応。先週の打ち合わせの議事録作成とメールなどの雑務。なでしこジャパンが見事なサッカーで3連勝。ロンドン五輪はもうすぐそこだ。夕方、新しいリノベーションについてあれこれ考える。楽しみなプロジェクトになりそうだ。

 夜、事務所の掃除、整理整頓が続く。深夜、雨が止んだ隙に目黒川沿いをちょっくらランニング。それから「ほぼ日」連載の原稿を進める。

9月4日(日)
 午前中、三宿にある中古マンションを視察。石山研の後輩が購入した素敵なマンションで、そこのリノベーションを依頼されたので早速現場を見る。これ以上東京らしい東京はないというくらいの眺望があり、面白い住空間が作れそう。カフェで打ち合わせ。近況報告も含めて、あれこれ話し合う。

 昼、チャリティーイベントROSESの会場へ。たくさんの人でにぎわっていた。僕の銅版画も「売約済」となっていて、しっかりとチャリティーに貢献できたと思うと嬉しい。ファッションジャーナリストの生駒芳子さんとフラワーアーティストのトシ子さんと3人でトークセッション。生駒さんのリードで「プロボノ」について話し合う。自分たちの職能をいかした、新しいボランティアの形。このROSESというイベントそのものがまさにプロボノなので、いろいろと楽しくトークも弾む。生駒さんとは初対面とは思えない何かを共感し、これからも何かとご一緒したい素敵な方だった。

 午後、建築家の難波和彦先生の事務所にてLAT's読書会に参加。『ベンヤミン・コレクション-1』について。流石に発起人でもある西島くんと岩元くんの発表だったので濃厚なものだった。訳者である久保先生も参加して頂き、ベンヤミンのアレゴリーなどについて議論が展開する。読書会というより、専ら勉強会の様相を呈していたが大変刺激的だった。シクシク途中退出し、ROSESの会場に戻って撤収作業。手際よくパネルの搬出を中心に進めて、10時半完了。15時間かけて設置した会場も4時間半ですっかり片付いた。これもまた学生ヘルプのみんなのおかげ。臨機応変によく動いてくれたので、大変感謝している。こうしたみんなの想いがちゃんと形になったイベントだったので感無量。

 みんなとラーメンを食して小さな打ち上げ。深夜、帰宅してばったり倒れるように寝る。悪天候のため計画していた明日からの富士登山はキャンセルとなった。こればかりはしょうがない。

9月3日(土)
 午前中メールなど雑務。SDレビューのためのフレームを宅配に出す。昼、梅田でオフィス内装について打ち合わせ。できることをやるということであれこれ提案する。

 台風が接近しているので甲南麻雀例会への参加は見合わせて、午後の新幹線で帰京する。車中、ほぼ日の原稿を書き進める。夕方、諸々のデスクワーク。夜、来週の富士登山のためにいろいろと大学時代の同級生から借りて、その後食事。近況報告も含めてあれこれと盛り上がる。同世代のこうした仲間がいるから頑張れる。

 深夜、これからの動きを確認しながら計画を立てる。やること盛りだくさんだが、しっかりとやれることをやろう。明日の日曜日はROSESの最終日。昼にはトークイベントにも参加。ベンヤミンを読みながら就寝。

9月2日(金)
 午前中、凱風館の現場へ。淡路島から山田脩二さんが来て、玄関の敷き瓦をはじめサンプルを見ながらの打ち合わせ。いよいよ具体的な提案としてデザインを落とし込んでいく。二つの玄関に対して質感の違う表情を作り出すことや外構の塀のデザインについても進めていく作業が続く。

 夕方、植栽コンペを実施。3組の造園家の方々に提案して頂く。三者三様、実に魅力的な提案をして頂き、内田先生夫妻と話し合いの結果一社を決定し、連絡する。きっと魅力的な庭がつくれるだろう。夜、梅田で友人たちと合流してサッカー観戦。歯がゆい試合展開ではあったが、最後の最後で吉田選手のロスタイムゴールで興奮。その後もみんなでワイワイ談義。深夜、ベンヤミンを読みながら就寝。

9月1日(木)
 今日から9月。2011年も始まったばかりと思っていたら、もう残り4ヶ月。ジェットコースターイヤーは続くので、しっかりと頑張りたい。朝一の新幹線で神戸に向かう。車中爆睡してしまう。読もうと思ったベンヤミンが進まず。午後から現場で打ち合わせ。凱風館におけるすべての家具について打ち合わせ。書斎の本棚を中心に、すべての家具のディテールを再確認した。続けて建具についてもしっかりと打ち合わせ。気がついたら6時間が経っていた。内部の木工事もいよいよ佳境。仕上げ材の諸々が綺麗にしっかりと進められていいた。

 夜、武庫之荘に帰宅。SDレビューのためのプレゼンテーションのためのフレームを梱包する。深夜、メールなどの雑務。

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