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『EVERYDAY NOTES』

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『OPENNING NOTE』

 
 

EVERYDAY NOTES - archive - 2010 november

11月30日(火)
 午前中、メールなどの雑務とU邸の見積り質疑書の整理。昼、新しい案件の敷地図とにらめっこしながらあれこれとスケッチ。午後、CGの仕事についての打ち合わせ。

 夕方、渋谷で取り置きしていた本を購入し、原宿のNIDショップに顔を出して社長と近況報告。夜、大学時代の友人が来所。学生時代は製図台を隣同士で並べていたが、何年ぶりかの再会盛り上がる。近況もほどほどに、来週の東工大でのゲストレクチャーについての打ち合わせ。

 深夜、テープ起こしのゲラチェックとU邸質疑応答書を進める。明日から師走。

11月29日(月)
 午前中、メールなどの雑務。新しい案件についての調べもの。午後、見積り質疑に対する解答の準備を始める。もろもろの電話対応をしてたらあっという間に陽が暮れる。来週の東工大でのレクチャーについても考える。
夕方、ゲラの最終チェックも行う。夜は、29(肉の日)ということもあって、駅前の気になっていた店で牛肉のほろほろ煮を食す。美味。

 深夜、『宇宙兄弟』(小山宙哉、講談社)1巻と2巻を読む。マンガは学生時代に『スラムダンク』と『稲中卓球部』で勝手に頂点を極めたつもりで読まなくなり、ベルリンで友人から手塚治虫の『アドルフに告ぐ』と『火の鳥』を読んで以来だったが、期待値が高かったにも関わらず実に面白かった。僕も三人兄弟の次男ということもあって、兄貴と弟の気持ちが分かるので深く共感した。生活の中で忘れがちな「生きるための原点」としての「夢」を純粋に描いたストーリーにどっぷり感情移入する。「マンガは一気に買って読んだりしないで、じっくり再読したりしながら読むように」と勧められたので3、4巻はまた時間をおいて読んでみたい。楽しみ。

 早速、『宇宙兄弟』に影響されて深夜の目黒川沿いを久方ぶりにランニング。寒くて、体も重かったけど、気持ちのいい汗をかいた。

11月28日(日)
 午前中、溜まった銅版画作品をあれこれ整理する。思えば白井版画工房に通うようになって二年弱、少しずつ作品も増えてきて、幾分か友人達の好意もあり売れたが、しっかりとドローイングも含めて発表の場を持たねばならない危機感を感じる。来年かな。継続も大切だが作品の質と量を上げて、発表することで情報発信力をつけたい。

 昼、電車に揺られて横浜へ。来年オープンする神奈川芸術劇場の見学会に参加。友人が舞台設計に携わっていて誘ってもらった。二時間弱、たっぷりと大ホールを案内してもらう。搬入口や奈落、舞台袖から上のスノコまで普段は見ることのできない場所を見せてもらい、最新の技術を駆使したことが分かる。観客席が競り上がって急勾配を作り出すことやプロセニアムが自在に移動することなどが丁寧に説明された。しかし、ある種過剰とも思えるこれだけハイスペックな建築をいかようにして演出家たちが使いこなすのかが楽しみでもあるから、来年オープンしたら是非とも素晴らしいお芝居を体験したい。

 移動の電車の中で『体験的高齢者住宅建築作法』(中原洋、彰国社、2009)を読み終わる。先日、安部さんのオープンハウスで中原さんにお会いし、この本を買って読んだのだが、実に丁寧にお施主さんとしての情熱が描かれていて面白かった。施主と建築家の幸福な関係。これは、良質の建築をつくる最低必要条件かもしれない。特に住宅になるとそこに生活があり、それをどれだけの精度で想定してつくれるかが大切で、そのコミュニケーション記録がこの本には実に丁寧に書かれている。何度も登場する「終わりよければすべてよし」という言葉が印象的。

 夜、渋谷で桑沢の教え子の結婚パーティー。今年から教えることになって、夜間ということもあって年齢も近い学生達だが、本当に人格者ばかりで、結婚する彼も最初の授業、しかも月曜日だったので彼らにとっても入学して最初の授業、を一生懸命聴いてくれて、その帰り道にそそくさと帰ろうとする僕をナンパして飲みに行った。宮崎から上京してきたばかりの素敵なフィアンセを皆の前でプロポーズするという粋な演出もあり、本当に感動的で温かい宴であった。結婚していない僕が二人にろくなスピーチができるはずもなく、よく分からないことを言ったけど、とにかくこれだけの仲間がいることを感謝して、お互い切磋琢磨してほしい。次回は、12月21日の課題講評会。これでやっとみんながデザインした作品を見ることが出来るので楽しみにしている。それまで、大いに悩んで、のびのびと課題に取り組んでやりきってほしい。

 深夜、メールなどの雑務。ブラッド・メルドーを聴きながら銅板に線を彫る。気がつけば三時を回ってるではないか。明日からまた新しい一週間、そしてついに水曜日には師走に入る。怒濤の一年は、怒濤のまま過ぎ去るのだろう。ガス欠にならないように、でも全力投球で頑張りたい。

11月27日(土)
 午前中、天気が良く掃除と洗濯を済ませる。メールなどの雑務、U邸の見積りに対する質疑書が各社出揃ったので整理していく。1/100模型に少し手を入れて完成させる。

 午後、東大製図室にて難波和彦先生の退職記念パーティー。鈴木博之先生と石山修武先生の祝辞で会が始まる。真ん中のテーブルには「箱の料理」がずらりと並べられていた。難波先生と石山さんにご挨拶。しかし、右を向けば伊東豊雄さん、左を向けば隈研吾さんら日本の建築界を支える大御所が勢揃い。ベルリンのワークショップで数年前お会いして以来の山本理顕さんや先日雑誌『CONDITIONS』のアンケートにも答えてもらった乾久美子さんらとも挨拶する。竹原義二さんとも初めてお会いして、ギャラ間での展覧会の感想や青焼き機で未だに手書で図面を描いていることを伺う。実に素敵な温かい会であった。

 夕方、渋谷にて取り置きしていた本を購入し、模型材料を買って帰宅。夜は、事務所でデスクワーク。これからのもろもろの進め方を見当する。深夜、何冊かの本を拾い読みしながらの雑読。

11月26日(金)
 午前中、メールなどの雑務。昼、見積り質疑書が届き始めるので検討。午後、U邸の外構についてあれこれスケッチし、1/100模型をつくり直して現段階のデザインを整理する。

 夕方、白井版画工房にて年賀状製作。ベルリンより帰国して三度目の年越し。今年も小さな銅版画作品を制作し、試し刷り。良い仕上がりだったので一安心。深夜、『切りとれ、あの祈る手を』を部分的に再読する。

11月25日(木)
 午前中、メールなどの雑務とホームページのアーカイビング。U邸の見積りに対する問い合わせ対応。午後、1/100の模型チェック。その後も見積りに対する質疑書や打ち合わせの議事録を整理する。エネファームの調べもの。新しい案件の準備作業。あっという間に陽が暮れる。

 夜、日本を旅しているベルリン時代の友人が再来所。明日、ドイツに戻るので最後の晩餐。先週で見積り図書をまとめたので事務所のスタッフと模型を手伝ってくれた学生たちも誘って労いの会とする。英語が飛び交い、旅の話で盛り上がる。建物としては安藤忠雄の地中美術館や修学院離宮が最も印象的で、場所としては沖縄の座間味島が良かったらしい。しかし、五週間も日本を旅した彼らは既に僕の行ったことない日本を多く回っていて不思議な逆転現象が起きている。というのもベルリンにいた頃は逆に僕がどん欲にヨーロッパを旅していたのでドイツ人の彼らよりも色んな所に行っていた。こうした意見交換を通してまた旅の充実感、記憶の定着作業が深まる。総勢7人で楽しい宴であった。

 深夜、銅板に向かって線を彫る。久しぶりな感覚を集中しながら楽しむ。

11月24日(水)
 午前中、メールなどの雑務。実家から送った段ボール三箱の本が届き荷解きするも本棚はパンパン。床から平積みしてたら、ついに大きなブックタワーが事務所に立ち上がる。

 昼、早稲田大学へ。六年ぶりに山本浩二画伯の設計演習の講義を受ける。今年のテーマは「キュビスム」。アルタミラの洞窟画から始まって、ダヴィンチ、ベラスケス、セザンヌ、ピカソとブラック、ホックニーと絵画史の本道における画家達の挑戦、つまりモノの存在感をいかようにして表現するかについてのレクチャー。三次元の物体を二次元の絵画に落とし込む作業における「多視点の同居」からキュビスムを説明。一点投資によるカメラが撮る写真とベラスケスの多視点の絵画の豊かさを教えてもらい、目から鱗。実習にも参加し、自分の腕時計をキュビスム的に描いていく。学生時代に戻った気分で無心に楽しく作業をさせてもらった。

 夕方、石山研のスタッフの渡邊とラーメンを食して近況報告。その後、目黒で打ち合わせを一本済ませて帰宅。事務所に戻ってゲラチェックを終わらせて、深夜、シンポジウムのテープ起こしの修正をコツコツと進めて完了、送信する。

11月23日(火)
 勤労感謝の日。小林さん夫妻とゆっくり朝食をとりながら、色々と話す。美味しいコーヒーも頂く。枝垂雨の降る美山町を出て、日吉駅まで送ってもらう。丸太の加工について車内で今後の段取りを確認する。

 小一時間で京都の山々から嵐山を抜けて市内に戻る。ピークを過ぎたばかりの紅葉した風景を味わう。京都国際ホテルにて養老孟司先生と内田樹先生によるマンガミュージアム4周年記念企画対談を聴く。日本の文化の在処や発展方法の東西比較から始まり、それぞれの分野である解剖/昆虫/合気道を中心に二人のインプロ演奏を聞いてるようで面白かった。何より二人のお人柄が会場にあふれて満員の観客はきっと満足したことだろう。内田先生に挨拶と美山町での報告をして、帰路につく。

 京都からの新幹線で『超訳 ニーチェの言葉』(フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ、ディスカヴァー、2010)を読み終わる。生きる上での基本的なテーマに分けられてニーチェの言葉が紹介されている。どこか岡本太郎の本にも似た潔さと切れ味があり、ふむふむと納得する箇所多き。自分の哲学を持つことの大切さとそれをつねにアップデートする必要性を再確認。文章を通してニーチェの声がしっかりと聞こえるところが巷の自己啓発書との決定的な違いだろう。シンプルなことだが今一度頭を整理して問い直すための良著。「きちんと考える人になりたいのであれば、人づきあいをすること。書物を読むこと。情熱を持つこと。」読み終わってから線を引いた所が『漂泊者とその影』から多かったので次はそれらの背景のコンテクストまで挑戦してみたい。

 夜、メールで届いたゲラのチェック。九月にやったシンポジウムのテープ起こしと十月にやった対談記事のチェック。こうした仕事を発表する機会を大切に積み重ねたい。

11月22日(月)
 朝早く、雨降る中奈良から電車を乗り継いで京都の日吉駅まで行く。「哲学する木こり」小林直人さんが車で迎えにきてくれて、美山町の観光スポットにて昼食のそばを食べ、茅葺き屋根の集落を散策しながら案内してもらう。午後、大工さんと合流し、小林さんの工場に行って、杉の丸太の加工方法について打ち合わせ。その場で斧やチョンナを使って丸太の革を剥いでいく。水分をまだ多く含んでいるので、実に不思議な表情を見せる。あまり工芸品のような仕上げをしてほしくないことと床柱のようにツルツルに仕上げることも避けてほしいことを伝えながら、程よいラフさと精度のある剥き方を試してもらい決定。今週中に三本の丸太をこのように剥いてもらい、芯まで背割りを入れることを決める。

 夕方、小林さん宅にてコーヒーを飲みながら丸太のことや林業のことをまた話し合う。奥さまともフランスやドイツの旅について話す。今年の五月に内田先生に連れてきてもらってから今日で三回目だが、小林さん夫妻のおかげでとても居心地が良く、林業と農業、自然と密着した生活にエネルギーをもらう。晩ご飯はこれまた美味しいおでんを頂く。その後も中沢新一/南方熊楠/佐々木中などについて意見交換。

 食後はこたつにみかん。テレビで『ラジオの時間』を見て、読書しながら早々に寝る。屋根に雨が優しく当たる音が心地よい。

11月21日(日)
 のんびり日曜日。先日、安部良さんのオープンハウスでお会いした中原洋さんの著書『体験的高齢者住宅建築作法』を読み始める。実家の本の箱を更に整理して、ベルリンの時の本が三箱も出てきて、中からカンディーダ・ホーファーの写真集などがみつかる。すぐさまコンビニにて東京まで送る手配をする。しかし、本棚のキャパオーバーはどうしようか。

 夜、美味しいウナギを食して、DVDを借りて観る。『あの日、欲望の大地で』(監督:ギジェルモ・アリアガ、2008)は、『バベル』の脚本家らしく、時間軸で物語の断片が少しずつ繋がっていくのが見所。こうしてゆっくりDVDを観たのも久方ぶり。

 深夜、明日の京都美山町行きの準備をし、雑読を続けて寝る。久しぶりにのんびり休日が過ごせたのでたっぷり充電できた。残り六週間弱の2010年をしっかり走り切りたい。

11月20日(土)
 午前中、車に乗って六甲山まで両親とドライブ。三ヶ月前に完成した展望台、六甲枝垂れを観に行く。独特な幾何学と素材の組み合わせによる空間が広がるものの、印象としてスケールが小さく感じた。もう一回り大きかったらまた違った空間体験になるのではないか。しかし、昼頃には多くの登山客で賑わっていたので施設としては成功しているのだろう。

 午後、苦楽園にてお墓参り。三時に模型を持って、御影にて内田樹先生夫妻と打ち合わせ。見積り図書をお渡しし、現段階でのデザインを再確認する。特別大きな問題点はなく、とにかく見積りの数字と予算の調整ができるようにあれこれと準備をせねば。外構のデザインについても具体的に進めたい。

 夕方からたくさんの方々が来て、甲南麻雀定例会がスタート。打ち合わせも終わり、気分よく切り替えて麻雀するも見事に二戦二敗。これじゃあ、出逢った時の負け話を挽回する勝ち話という物語が全くつくれない。でも、皆さんと打つのは実に楽しいので、じっくりと挽回したい。

11月19日(金)
 午前中、大阪の方まで模型と図面を持って出かける。天気は快晴で、車窓から紅葉した山々が綺麗に視えていた。建設会社さんと打ち合わせ。昨日同様、しっかりと建築のコンセプトと熱意を伝える。午後もまた別の建設会社さんと打ち合わせ。とにかく良い建築をつくるためにはしっかりと共通認識を確立し、それぞれの経験をいかした最良の方法をみつけ出していきたい。一つの建築を作り上げるのに関わる人の数はどんどん増えるのでやはり建築家が指揮者として思いを伝えていかないといけないことを実感する。これで大きな船が動き出した。身を引き締めて頑張りたい。

 移動の電車で『切りとれ、あの祈る手を』(佐々木中、河出書房新社、2010)を読み終わる。実に衝撃的な本で、話し言葉であるにもかかわらず、ずっしりと文章が迫ってきた。読書の本質的な役割を解いていく中で、文学や芸術の強度がもつ革命の可能性について実に真摯な言葉が刻みよく連続する。特に印象に残ったのが「「本の読めなさをそれでも読む」という文学と革命の苦難、この本の他者性に由来する偉大なる戦いは、自分と世界とテクストが別にあるということを前提とするのです」という箇所であり、僕の中で内田樹先生がレヴィナスの本を初めて手にした時に師と選んだエピソードと共鳴した。著者の前著『夜戦と永遠』が正に自分のその「読めなさ」を思い知らされて、僕の机の上に断念して置かれているが、近く再チャレンジしてみたい。こうした本質的な読書をしない限りいかなる突破口も見つけられないだろう。

 夜、両親と合流しなんばで美味しい日本食を食べて、その後歯医者さんになった小学校時代の友人と飲む。二人で近況を話し、U邸の模型も見てもらう。来年から本格的に彼の歯科医院の設計を進めること約束する。これまた沢山の物語が生まれ得る面白いプロジェクトになりそうだ。

 深夜、『寝ながら学べる構造主義』を読み進める。

11月18日(木)
 一睡もしないで見積り図書をまとめて、家を出る。品川で新幹線に乗った途端に寝てしまい、気がついたら新大阪に着いていた。地下鉄を乗り換えて、建設会社さんと打ち合わせ。模型を見てもらいながら設計コンセプトのプレゼンテーション。見積り図書をきめ細かく説明する。

 午後、続けて京都に移動し、別の建設会社の方と打ち合わせ。見積りして頂く上で必要事項をしっかりと話し合う。グレードの高い建築を一緒に目指していける良き職人さんとの仕事を予算内でまとめられるように努力したい。

 二本の大切な打ち合わせが無事終了し、夕方、実家のある奈良に帰る。夜、シチューとメンチカツをたらふく食して、また明日の打ち合わせに備えてすぐに寝る。『寝ながら学べる構造主義』(内田樹、文春新書、2002)を読むも、さすがに睡魔に負けて本当に寝てしまったので明日の移動でまた読み進めたい。

11月17日(水)
 午前中、メールなどの雑務とU邸の見積り図の準備。模型の修正と塀の製作。午後も冷たい雨が降る中、ひたすら作業。赤ペンチェックと図面修正の繰り返し。設備関係の書類からまとめて、平、立、断。夜、金箱構造事務所にて最終構造図を受け取りに行く。徒歩で打ち合わせできる距離というのは有り難い。展開図と外構図を最後までまとめて、気がつけば朝の六時を回っていた。事務所のプリンターが300枚近い量をプリントアウトした。

 慌てて出張の準備をして、早目に出発。いざ、大阪へ。完徹してしまった。疲れているけど、何だか清々しい達成感。朝の冷たい空気で目が覚める。さて、あとは予算内に見積りが上がってくるのを願うのみ。

 ボジョレ・ヌーボーが解禁になったらしいが、この仕事がまとまったらさぞ美味しいことだろう、楽しみたい。

11月16日(火)
 午前中、メールなどの雑務ともろもろの電話対応。昼、仕上げ表と展開図の整合性をチェックして図面の精度を上げていく。丹念に細かいところを決めていく。設備関係の図面を微調整し、いよいよ見積り図書の全貌が見えてくる。

 夜、赤坂見附、ホテル・ニュー・オオタニにて「DANNA会」キックオフの会に参加。素晴らしい発起人の方々に紹介され、プロボノ文化を浸透させるべくそれぞれの起業者たちが共に相乗効果が生み出せるように頑張りたい。多くの先輩方から良質な刺激を受けて事務所に戻る。

 深夜まで仕上げ表と展開図のチェックをしばし続ける。外構のアイデアを整理したので、明日の最終日に模型で確認しよう。あと一日の作業、リストを確認してしっかりとまとめあげたい。ベットに倒れ込むように寝る。

11月15日(月)
 午前中、メールなどの雑務。色々とまた新しいことが動き出しているので集中せねば。昼から西国分寺へ。お世話になっている建築家、安部良さんの新作オープンハウス。大きな空間が床のレベル差を利用して多段式にスパイラルをつくる流動的な空間体験。中心に通り抜け出来る階段があり、黒と白の仕上げを使い分けてトップライトからの明るい光が印象的だった。

 新宿でインクとA3の紙を買って帰宅。途中本屋に寄ったらついつい二冊購入、まだ読んでなくて読みたい本が山積みなのに。そういえば、久しく映画も観ていない。『ノルウェーの森』公開まで我慢かな。夕方、U邸の構造図をチェックして、展開図の修正と仕上げ表に手を入れる。なかなか作業のスピードがつかず、あっという間に深夜になっていた。気分転換にブラッサイとクラインの写真集をそれぞれパラパラと覗く。違う時代のパリとニューヨークが切り取られていて、見飽きない。

11月14日(日)
 午前中、メールなどの雑務。昼、U邸の見積り図書の準備。まずは、立面図の雨樋関係のスケッチ。外構のイメージを考える。次に内外仕上げ表を作成スタート。構造模型の修正と仕上げ完成。給排水、空調、電気設備関係の図面チェックに追われる。ひたすら仕事してたら深夜二時を回っていた。今日は日曜日だったのか。

11月13日(土)
 午前中、金箱構造設計事務所にて打ち合わせ。丸太の使い方から屋根の細かいポイントを含めて、二時間みっちり話し合う。
こちらもラストスパート。

 午後、メールなどの雑務。U邸の展開図をブラッシュアップして、給排水系統図をチェック。京都の美山町やキッチンメーカーとの電話対応も続く。あっという間に陽が暮れる。夜、青山で友人の結婚パーティー。花嫁さんがドレス姿でトランペットを吹き、新郎が続けてロックダンスを披露するというとてもハッピーな宴だった。

 深夜、デスクワークをすませて、U邸の立面図をスケッチ。図面リストを確認しながら見積り図書のまとめ方を検討。『切りとれ、あの祈る手を』もついに第四章(第四夜)に差し掛かる。重い言葉の連続に酔いしれる。

11月12日(金)
 午前中、さすがにダウン。昼、構造模型のブラッシュアップ。棟と梁の関係を1/30模型で確認。仕上げの位置などについてあれこれ検討し、1/50の模型もアップデート。夕方、メールなどの雑務と見積り調整の電話に追われる。

 夜、寒くなってきたのでもつ鍋を食して、深夜、展覧会に行けなかったのでGAの『藤森照信読本』をパラパラ目を通す。いつの間にか実に多くの作品を産み落としている。学生の時にタンポポハウスを案内してもらったのを思い出す。

11月11日(木)
 午前中、U邸の空調、キッチンの見積りの整理。昼から日建でのレクチャースライドを準備。話の方向性を整理する。設備系統図のチェックと構造模型や1/50模型の進め方を検討。

 夕方、飯田橋のNSRIホールへ。日建設計主催のナイトフォーラムにパネリストとして参加。建築家の与条件シリーズ第二回のテーマは「建築×人数」。日建設計の設計部門代表の亀井忠夫さんによる仕事の紹介からスタートし、続けて僕がザウアブルッフハットンの仕事と『内田邸/道場』を通して、建築と人数、つまりは一人で建築とどう向き合って設計していくかを説明。「他者(クライアント)への想像力」と「責任ある判断」、「コミュニケーションの精度」という三点から自分のスタンスを説明。建築家は100人の団員を率いる指揮者のメタファーとして語る。続けてランドスケーププラス主宰の平賀達哉さんが環境問題を取り上げたムービーを紹介。最後に隈研吾建築都市設計事務所の設計室長の藤原徹平さんが「世界をセルフビルドするために必要な人数」と題したミニレクチャー。それぞれ与えられた15分ずつの時間を終え、トークセッション。アトリエ事務所と組織事務所という人数の違いが導く建築への影響について語り合う。藤原さんより提起されたSOMのゴードン・バンシャフトのような大規模組織事務所をドライブする個人のあり方という視点で議論にエンジンがかかる。しかし、気がつけば十時になり、終了。近くのイタリアンで打ち上げ。学生時代ぶりの再会もあり、盛り上がる。しかし、入社四年目の人たちが自主的にこうした会を企画することからして、日建のみなさんの大組織としての変革の必要性に対する意識の高さを認識。それは、個人事務所にとっても現代における建築のあり方や建築家のライフスタイルという面でも考えることができたのが収穫。続けて居酒屋で二次会。ベルリン/ケルン旅行から帰ってきたばかりの藤原さんによるズントー建築の話から始まって建築談義に華が咲く。盛り上がっていたら五時をまわっていた。藤原さんとタクシーで帰宅。渋谷を通った時に異様な数の警察がいたのはAPECだからだろう。しかし、久しぶりに朝まで飲んだが、実に収穫の多い夜になった。

11月10日(水)
 午前中、メールなどの雑務、U邸のキッチンの見積もり検討や和室のレイアウトを整理する。

 昼、京都の美山町に電話で杉の丸太についてあれこれ相談、乾燥方法が問題。放射冷暖房PSの担当者が来所。現状の計画の確認と今後の進め方について打ち合わせ。夕方、建具表をチェックし、来週の見積もり図面リストを整理する。夜な夜な作業が続く。

 深夜、『切りとれ、あの祈る手を』を読み進める。

11月9日(火)
 午前中、メールなどの雑務。来週の見積もりスケジュールがすべて決まる。いよいよ一つ目の山場に向けてエンジンを上げていかねば。

 昼、サッシの担当者が来所。早速、建具表を見ながら問題点を洗い出して決めていく。すぐにあれこれと対応してもらい、まとまっていく。午後、飯田橋にて山本浩二画伯と合流し、日建設計にて打ち合わせ一本。その後、喫茶店でお茶をしながらここまでの動きをおさらい。それにしても、画伯に電話で内田先生の『日本辺境論』について話したのがすべての始まりだが、それから一年でこうも状況は変わりうるのか。

 夕方、事務所に戻って書類の整理。やることリストをまとめて、明後日のフォーラムについてもスケッチする。夜な夜な作業は続き、深夜、読書して寝る。

11月8日(月)
 午前中、メールなどの雑務。給排水についての調べもの。午後、パナソニックの設備チームが来所。細かい調整とこれからの進め方を打ち合わせ。

 午後、ポートフォリオをプリントアウトし、もろもろの準備。夕方、U邸の立面図の調整。開口部と屋根の関係を再度スケッチ、検討する。門も含めた外構のアイデアがまだまとまらない。スケッチを続けよう。

 夜、日建設計のナイトフォーラムに向けて頭を整理する。何か型にはまらない議論の展開を考える。深夜、再び村上春樹のインタビュー集と佐々木中の『切りとれ、あの祈る手を』をじっくり読み進める。

11月7日(日)
 午前中、じっくり寝て休む。部屋の掃除もほどほどに、青山の難波先生の事務所、界工作舎にて読書会、LATsに参加。『生きられた家』(多木浩二、岩波現代文庫、2001)が課題図書。「生きられた家」の影響から伊東豊雄や坂元一成、妹島和世の作品群を検証するところから議論はスタート。「建築家とクライアントの関係」や「計画と経験のズレ」に対するそれぞれの参加者の意見が飛び交いとても健全な議論の場であった。東大での読書会にも幾度か参加させてもらったが、学生と教授というヒエラルキーがなくなったからか、参加者が皆いきいきと意見を述べていたのが印象的。しかし、思考回路を柔軟にして多くのファクターに気配りすることの重要性を感じた。

 夕方、六本木に向かって森美術館の『ネイチャーセンス』展、最終日に滑り込む。吉岡徳仁氏の作品が見たくて行ったが、正直、写真で見た印象を超える体験を得ることはできなかった。それは、やはり雪などの実体験できる自然現象を何か別の物に(今作品は羽毛)変換して美しく見せるということが、視覚的効果に限定されているからではないかと。それよりは、栗林隆氏の森や島の作品に胸を強く打たれる。素材を変え、スケールを変え、われわれ鑑賞者の視点を自由にすることで今まで持っていた森や島のイメージを大きく拡張する架け橋となる様な作品であったので、時間を忘れて見入ってしまう。とても収穫の多い展覧会であった。

 夜、デスクワークもほどほどに、『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』(村上春樹、文芸春秋、2010)と『切りとれ、あの祈る手を』(佐々木中、河出書房新社、2010)を読み始める。両著ともに違った空気感だがビンビンと言葉が響いてくる本で、久しぶりに強烈な引き込まれ方をする読書体験。味わうようにゆっくり、じっくりと文字を追う。

11月6日(土)
 朝から快晴。気持ちの良い秋の日。夏から冬にシームレスでいかないで、こうした日々をせめて二週間味わいたい。メールなどの雑務ともろもろの対応に午前中が潰れる。

 午後、U邸の平面詳細と建具表のチェック。届いた焼き杉のカットサンプルを見ながらあれこれと立面について考える。夕方、事務所のポートフォリオをまとめてプリントアウトし、大枠が完成。デスクワークに追われる。夜、建具表と展開図を再度チェック。

 深夜、『生きられた家』(多木浩二、岩波現代文庫、2001)の再読完了。実に広がりのある内容で、読み終えたハイデガーの講演の内容と含めて明日の読書会LATsが楽しみだ。

11月5日(金)
 午前中、メールなどの雑務。細かい見積もり調整などの電話対応。昼は、ゆっくりランチ。屋根についてあれこれ考える。

 午後、OfficeOhsawaの大沢さんと新しい案件について打ち合わせ。どうなるか分からないが、面白いことができそうでワクワクする。ロケハンも含めて、品川のとあるフォトスタジオに。倉庫を改修した実に不思議な空間体験だった。その不思議な空間の強度は、あらゆる素材が丹念にブリコラージュされて、そこに時間の蓄積が感じられることとデザインにおけるマスタープランの不在だろう。つくり続けることも魅力的。しかし、数ヶ月後には、再開発事業で立ち退かなければならないらしく、信じられない。どうしてこんな豊かな空間をいとも簡単になくせるのだろう、大きな間違いだと思う。

 夕方、久方ぶりに白井版画工房へ。じっくりと銅版画の刷り作業を進める。指を真っ黒にして六枚を刷り上げる。夜、U邸の立面図をチェック。『コンフォルト』最新号が届き、9月にやった内田樹先生と五十嵐太郎さんとのシンポジウムのレビューが掲載されていた。深夜、『生きられた家』を読み進める。

11月4日(木)
 午前中、メールなどの雑務。U邸の和室レイアウトをあれこれ検討し、展開図に手を加える。平面図も修正。来週、再来週の打ち合わせのスケジュール調整。ひたすら作業していたら、あっという間に外は真っ暗。すっかり日が暮れるのが早くなった。

 夜、日本を五週間旅している元同僚の友人と合流して恵比寿のお好み焼きを食す。北海道から始まった旅で寿司とラーメンばかり食べてきたとのことでえらく喜んでくれた。そのまま渋谷のバー・ピアノへ。彼の30歳の誕生日ということでシャンパンで乾杯。リクエストしたら12時に店員さんがハッピバースデーをピアノで弾いてくれた。ベルリンのバーにいるかのごとく久しぶりに大いに盛り上がった。

 深夜、帰宅しても寝られなくて銅板に向かって少々針を走らせる。

11月3日(水)
 文化の日は、快晴。朝から洗濯機を二回まわして、部屋の掃除。午後、自転車で東京デザインナーズウィークに行くも、ミラノのサローネを見たことある者としては、デザインを看板にしていてアートの展示『ジャラパゴス展』が一番印象に残るのでは問題ありか。合同学園祭の様相に落胆して、六本木のデザインタイドへ。こっちは、もっと厳選された感があるが、郡を抜くほどに印象に残る物はなかった。中村竜治さんの会場構成が最も素晴らしかった。軽やかに空間を仕切り、動線を誘発する巧さ。

 ABCで本を物色し、三冊購入。カフェで読書。夜、デスクワーク。久しぶりに銅板に向かって線を彫る。ゆっくりとした時間が流れる。深夜、思い立って目黒川沿いをランニング。断食して早二ヶ月。東京マラソンの抽選に今年も漏れてからモチベーションが上がらない。どうにかせねば。走ってると何も考えないようで考える感覚が心地よい。半時間ほど汗をかく。読書して寝る。

11月2日(火)
 午前中、実家でゆっくり。朝から美味しいブリ大根を食す。昼の電車で京都の醍醐へ。棟梁の職人さんと打ち合わせ。ご自宅に招いてもらい、木についてあれこれと話を聞かせてもらう。どういう形にしろ、経験豊富な現場の棟梁さんの技術をいかした良い仕事をしたい。昔の蔵の扉についても話し込み、あっという間に二時間以上が経過。

 夕方の新幹線に飛び乗って、東京に戻る。『梅棹忠夫 語る』(聞き手小山修三、2010)を読み終わる。文章でなく語り言葉なので、とても豪快な人柄、印象が強度をもって伝わって来る。梅棹氏の国際感覚が目で見てスケッチなどの記録をし、自身の思考の結果であることを思い知らされる。近く『文明の生態史観』を読みたい。

 東京の夜空にえらく綺麗な三日月がひそやかに輝いていた。

11月1日(月)
 朝の新幹線で模型を持って新大阪へ。電車の中で来週の読書会Latsのために『生きられた家』の再読を進める。学生時代とは違ったリアルさを持ってテキストが伝わってくる。

 昼、大阪で内田樹先生夫人と合流してキッチンのショールームを見学。あれこれと相談。そのまま電車で御影まで行って、内田先生と合流し設計の打ち合わせ。内部もつくり込んだ模型を覗き込みながら、現況のデザインを説明。しっかりとした共通認識の下で見積もり依頼までまとめられるように細かいところまで話し合う。あっという間の三時間半。

 その後、ワインで乾杯し、先生の手作りハヤシライスをいただく。充実した打ち合わせの後とあって空腹を満たし、とても美味しかった。食事中の会話は専ら先生が最近見た12月公開予定の映画『ノルウェーの森』について。

 夜の電車で実家の奈良に帰る。シャワーを浴びて倒れ込むように寝る。

 

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