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『EVERYDAY NOTES』

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『OPENNING NOTE』

 
 

EVERYDAY NOTES - archive - 2009 december

12月31日(木)
 2009年大晦日。朝から東大寺に行って大仏を観に行く。重源の南大門は、いつ観ても構造体がむき出しの美しさでもって来客を迎えてくれる。幾度となく繰り返された修復で変容した大仏殿の模型を観ていて、やはり重源のプロポーションの美しさに比べると現況のそれはかなり小さくなってしまっている。焼けなくなってしまった七重塔が建っていた風景を想像する。

 午後、三重県の鳥羽までドライブ。山間の風景が続く中、三時間程で宿に到着。家族揃って初めて外での年越し。部屋から綺麗に伊勢湾が視えて、夜は少しばかり欠けた満月が湖面にキラキラの光を落としていた。

 みんなで年越しそばを食べながら新年を迎える。

ykas ykas

12月30日(水)
 午前中、メールなどの雑務。午後、薬師寺に足を伸ばす。東と西の二つの塔に千年の時差があることを楽しみに行ったら、いよいよ東塔の方も修復作業に入っていた。しかし、薬師寺は多くの施設が綺麗に修復/再建されていてどこか風情を感じるには奇麗すぎる感がある。
けれども冬の澄んだ空気に人影の少ない薬師寺は何だかすごく落ち着くスローな時間。『百寺巡礼』(五木寛之、講談社、2003)を読むと、薬師寺は写経によって支えられていることを知る。

 夜は、『伊勢神宮』を少しずつ読み進める。深夜、卒業した小学校までランニング。いつも歩いていた道が狭く、距離も短く感じた。今年はこれで走り納め。来年もフルを一本は走りたい。

yakushiji yakushiji

12月29日(火)
 午前中、メールなどの雑務。父親と車の洗車などを手伝ってゆっくり過ごす。午後、ひたすら家中にある学生時代の僕の本が入った箱を開けながら整理する。大切な建築家の作品集や大好きな作家の写真集などがみつかって、早速十箱ほど東京まで郵送する。

 夜、小学校時代の友人と再会し食事。一緒に秘密基地をつくったりして遊んでいた友人が立派な歯医者さんになっていて、将来の独立と歯科医院の設計の打ち合わせ。これは、何が何でもしっかりとつくりたい大事なプロジェクト。来年の仕事の軸になるように動きたい。帰宅後、来年の動きをあれこれと考えてメモ。深夜、『伊勢神宮』(井上章一、講談社、2009)を読み始める。久しぶりの井上さんの文体に盛り上がって読み進める。軽快な論の運びに誘われて、伊勢神宮を頭の中で旅する感覚。

12月28日(月)
 午前中、家族で西宮まで車で行って、お墓参り。一年の挨拶を。午後、学生時代からお世話になっている画家の山本浩二さんとミラノで会って以来の再会。一緒に内田樹先生宅にて忘年会に参加。初対面にも関わらず、実に気さくで楽しい方々と盛り上がる。慣れない関西の電車に終電を逃しそうになるも、どうにか奈良まで帰ることが出来た。

 深夜、メールなどの雑務。読書しながら寝る。

12月27日(日)
 午前中、部屋の大掃除。帰郷の荷物を大急ぎでまとめて東大へ。難波研究室の読書会に出る。理工学部校舎に鍵がかかっていて閉め出されてしまい、十分遅刻。『第一機械時代の理論とデザイン』(レイナー・バンハム、鹿島出版会、1976)について院生を中心に議論。難波先生の明快な解釈で本書を「コンストラクション」と「コンポジション」で読み解いていく。イギリス人のハイテク趣味とバンハムの晩年のロス移住について考える視点が新しくて興味深い。

 そのまま新幹線に飛び乗って奈良へ帰郷。大阪で建設会社をやっている友人夫妻たちと合流して忘年会。大学時代からの友人たちが皆それぞれの道で頑張っているのが大きな刺激となる。一年ぶりの実家は、やはり小学校時代を過ごした家なので、今となってはすべての場所のスケールが小さく感じるのでガリバーになった気分を味わう。

12月26日(土)
 午前中、事務所のフォリオを整理して『M』での展示資料をまとめる。午後、メールなどの雑務をし、新しいコンペのブレストを進めて安部アトリエへ。文献を見ながらあれこれと打ち合わせ。

 夕方、青山にある「ときの忘れものギャラリー」にて忘年会。学生時代から磯崎新や安藤忠雄の銅版画を観に行っていたが、石山さんの個展を機に白井版画工房を紹介してもらったりしてお世話になっている。今年は、小野隆生さんの作品や多くの写真家の作品たちに触れる機会を与えてもらい感謝している。

 夜、帰宅してデスクワーク。ジャック・ジョンソンの軽快な音楽を聴きながらドローイングに着色作業を進めて完成させる。これで年内の仕事も一段落。気持ちよく、倒れ込むように寝る。

12月25日(金)
 午前中、メールなどの雑務。錦糸町の飲食店エントランスのデザインを進める。昼、年賀状制作。PCが壊れてしまったので名簿ソフトが使えないため180枚の宛名を手書きで書く。メッセージも書き終わるまでモンブランのインクも四度補充する程の量。丸一日かかってしまい、深夜、近所のポストに投函する。思えば十年前、大学に入学して最初のオリエンテーションで後に研究室に入った石山さんの挨拶で「建築家になりたい奴は、年賀状が500枚来るような人間になれ」と言ったのを今でも鮮明に覚えている。まだまだ半人前だな。

 メリークリスマス!!!

12月24日(木)
 午前中、メールなどの雑務。午後はCGの仕事進める。夕方、新しいコンペの打ち合わせで安部アトリエまで。年内、年明けのスケジュール調整をする。夜、事務所でCGの仕事をまとめて送信。

 『他者と死者/ラカンによるレヴィナス』(内田樹、海鳥社、2004)を読み終わる。装丁の絵が早稲田大学でお世話になった画家の山本浩二さんのものであったのでジャケ買いをした本だが、内容は先日の『日本人辺境論』のそれとリンクする部分も多く、「学ぶ姿勢」や「他者」についての深みを考えるいい機会になった。村上春樹の「うなぎ」を例に挙げて、「同じ一つのことを言うためには二人の人間が必要なのだ」という部分が印象的。

 深夜、ドローイングの着色作業を始める。イメージしていたものを少しずつ描き進めるとまた新しいアイデアが生まれ、筆が止まらなくなる。時計は三時を回ってしまう。気がつけば、夜が明けてクリスマス。

12月23日(水)
 午前中、ジャック・ジョンソンを聴きながら、ドローイングを描き続ける。もうすぐ着色するところまでいけそうなので、年内完成の目処はついた。

 午後、CGの仕事を進めて、年賀状制作を本格的にやる。ドローイングをコミッションしてくれた友人が来所。学生時代のスケッチから今のドローイングの流れを説明する。自分のものづくりについて色々と話して理解、共感してもらうことの大切さを実感する。

 夕方、ニューヨークで知り合った友人たちのクリスマス・パーティに顔を出す。こうした異業種で活躍する同年代との接点を大切にしたい。ニューヨーク在住経験者が中心になっているメンバーなので盛り上がる。続けて、夜はトロント時代の友人宅で忘年会。素敵な手料理に18年来の友人たちと話し込む。

12月22日(火)
 午前中、メールなどの雑務と読書。午後、飲食店のエントランスデザインをエスキス。現場で感じた印象をしっかりと新しい形に落とし込んでみたい。

 夕方、DUNE社長と年度末の打ち合わせ。久しぶりにゆっくりと近況を話し合い、これからの展開を一緒に考える。こうした同士を持っていることを大切にしたい。思えば一年前は、NIDの現場で動き回っていたのを思い出す。

 『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』(林總、ダイヤモンド社、2006)を読み終わる。経理についての入門書。建築家は何かを仕入れて売ったりする訳でないないので直接的に自分の会社には影響しないが、いろいろと勉強になった。2009年度の低空飛行をしっかり反省し、軌道に乗せられるきっかけを2010年にはみつけたい。

 夜、高校時代の友人たちと忘年会。埼玉の小さな男子校、卒業して十年以上経つが、みんなそれぞれの道で頑張っているのでいつも刺激になる。深夜、帰宅してドローイングを進める。締め切りがある訳ではないが、年内に気持ちよく完成できるようにペンを進める。これまた今までにない線が現れてくるので描いていて面白い。BGMは、スタン・ゲッツのサックス。

 珍しいことに連日、「プロジェクト30」の「しおり」が届く。代官山の『M』オーナーより、力強く塗られていた。累計81枚。もちろん130枚すべてが届くとは思えないが100枚になったらフレームに入れる工夫をしたい。

12月21日(月)
 連日の快晴だが、空気はキリっと冷たい。午前中、CGの打ち合わせの資料を整理して仕上げる。午後、錦糸町にて打ち合わせ。デザインのアイディアをプレゼンし、方向性を確認。今後の展開を話し合い、年内に第一フェーズをまとめることを約束する。続けて、錦糸町の飲食店の現場を視察。職人さんからの紹介でエントランスのリノベーション依頼を受ける。何が出来るか分からないが、現況を見てあれこれとイメージを模索する。思えば一年前に一緒にNIDを作ってもらった職人さんなのでまた一緒に仕事が出来れば嬉しい。これもぜひ頑張ってみたい。

 夕方、事務所に戻ってメールなどの雑務。早速エントランスのデザインをスケッチする。夜は、読書とドローイング。今日は、久方ぶりに「プロジェクト30」の「しおり」が届く。未だにお互いを「ちゃん」付けで呼び合う数少ないアメリカ時代の幼なじみよりクリスマスカードと一緒に返信されていた。僕の着色を丁寧にトレースしてくれたのだろう。ポストには又、イタリアより友人建築家のクリスマスカードも届いていた。ネットですぐにメールが出来る環境なのに、こうして写真付きのカードを送ってくれる友人が有り難い。バウハウス大学を卒業し、イタリアで就職したとのこと。思えば、三年前にインターンしていたニューヨークでお世話になって以来だ。時間が経つのは本当に早い。僕も早く年賀状を終わらせねば。

ykas ykas

12月20日(日)
 午前中、メールなどの雑務。午後から読書とドローイングを進める。窓から気持ち良い快晴の空から冬の低い光が鋭く入ってくる。

 夜、『たみおのしあわせ』(監督:岩松了、2008)のDVDを見る。不思議な親子の距離感が一貫して描かれていて面白い映画だった。キャスティングも良くて、それぞれの役者さんたちがいい空気感を演出する。2009年も後一週間とちょっと。しっかりと師走を走りきりたい。

12月19日(土)
 午前中、ゆっくりする。午後から東京都現代美術館へ足を運ぶ。レベッカ・ホルンの回顧展を観に行く。ベルリン在住で、黒い羽や機械仕掛けの作品が多く、作家としての彼女の独特な世界観が展開していて楽しませてもらった。身体性の延長がテーマとなり鑑賞者に新しい知覚の可能性を考えるきっかけとなって作品が迫ってくる。また、美術館のエントランスには井上雄彦の水墨画のような大作が飾ってあって見応えがあった。あそこまでスケールオーバーすると一人の作家が紙に向かって描くという行為に神聖な何かが吹かされて表現されているようだ。

 夕方、青山のときの忘れものギャラリーにて写真家細江英公さんのギャラリートークに行く。この度復刻した写真集『鎌鼬』の発行に合わせて写真が展示されていた。それこそ凄まじいスピードで動き続ける舞踏家土方巽を切り取った強度のある写真が連続している。四十年前の写真なのにすごく新鮮。カメラのテクニカルな話から始まってイタリア・ミラノの屋敷で行った個展を挙げて東洋と西洋のハーモニーについて話を伺う。

 深夜、バルセロナ対エストゥディアンテスのクラブW杯決勝戦を見る。ベロン対メッシというアルゼンチンの新旧エース対決となった一戦。年齢が一回りも違う二人だが、バロンドール獲得で勢いづくメッシに軍配が上がる劇的な勝利。もう来年には南アフリカでW杯があると思うと今から楽しみ。

12月18日(金)
 何とも不思議な夢を見て起きる。午前中は
メールなどの雑務。昼は、CGの仕事の展開を考える。新しいコンペの誘い。情報をチェックする。面白そうなので頑張ってみよう。

 夕方、白井版画工房にて年賀状を持ち帰る。帰宅して早速刷り上がった年賀状に着色作業を進める。今年は、何種類かのバリエーションをつくる。いよいよ年賀状作りも動き出した。

 夜、ふと空を見上げたら寒くて澄んだ東京の冬の空にオリオン座がくっきりと視えた。いつぶりだろうか、星座を認識したのは。深夜、ドローイングを進める。こっちもいよいよ線が完成しそうなので来週には着色作業を始められそうだ。

12月17日(木)
 午前中、メールなどの雑務。昼、ベルリンより一時帰国中の友人に会う。二年弱ぶりの再会で近況を語り合い、今後一緒に何かやれるように相談する。その後、恵比寿で打ち合わせ一本。代官山の『M』にてドローイング作品とテキスタイルを撤収して事務所に戻って仕事。

 夕方、石山研時代の後輩とお茶。近況から博士論文についてあれこれと話を聞く。それぞれの考えをぶつけることで頭の中が整理されることがあるのでこうした仲間を持っていて有り難い。続けてNIDに顔を出す。展示会をやっていて、社長と挨拶する。

 夜は、代官山の『M』にてフランス人ダンサーによるコンテンポラリー・ダンス・パフォーマンスを観る。壁から作品群が無くなり、白い壁となった『M』は新しい表情をしていた。

12月16日(水)
 午前中、メールなどの雑務を済ませて東大へ。コロンビア大学で建築を勉強し脚本家として活躍するオーレン・サフディによる特別講義『Private Jokes, Public Places』を聞きにいく。建築課題を講評するシーンを通してドラマを描く芝居をつくっていて興味深かったが、そこに普遍的なものがあって、演劇としてどれだけ伝わっていくのかは難しいのではないかと思った。DVDで一時間の作品を観てからのQ&Aだったので、実際に劇場で観たらまた違った要素を吸収できるのかもしれない。

 午後、事務所に戻って展示や原稿の仕事のスケッチ。『リチャード・ローティ』(大賀祐樹、藤原書店、2009)を読み終わる。実に丹念にローティの哲学をひも解いてくれる入門書。頭の中に地図ができあがったので、いよいよローティ自身の著作に挑戦したい。しかし、この本の著者が自分より一つ若いということに驚き、大学も一緒なので後輩ということになる。これからの展開を期待したい。

 夜、青山で打ち合わせを一本。それから代官山の『M』に行く。二週間ばかりドローイングを二作品展示させてもらって多くの人に観てもらったことで新しい繋がりも生まれて、作品の受け止め方やこれからの作品にも多くの示唆をもらって収穫は沢山あった。最終日ということもあって、五組の友人たちが足を運んでくれて盛り上がる。明日、作品を撤収するがこの二週間、『M』という場所でたっぷりと呼吸したドローイングは新しい表情を獲得した。

12月15日(火)
 午前中、メールなどの雑務。『CONDITIONS』の反応も返ってきて対応する。午後からホームページの微調整をする。代官山の『M』にて展示風景を撮影。いよいよ明日で最終日。今回の展示で多くの反応があり、これからの展開もありそうなので楽しみ。

 夕方、青山で打ち合わせ。夜、CGの仕事の第二フェーズを考えてスケッチ。深夜、『文化とは何か』(テリー・イーグルトン、松柏社、2006)を読み終わる。文化という定義することが難しいテーマに対して多角的な論評を展開していて読み応えがあった。同時に読んでるリチャード・ローティの引用もたくさんあった。何らか結論らしきは見つからなかったが、多くの示唆に富んだ文章に線を引いた。続けて『アフター・セオリー』を本棚から引っ張り出す。じっくりと読んでみたい。

q yk

12月14日(月)
 温かい冬の一日。カフェでゆっくり『リチャード・ローティ』を読み進める。午後、ホームページの更新作業。『 WORKS 』『 EXHIBITIONS 』にコンペと近作を公開する。データの整理から編集、構成までやっていたら夜までかかってしまう。日本語と英語版が共に完成。こうした地道な情報発信を続けなければならない。

 夜、ドローイングに向かう。フランス語訛りの英語で唄うステイシー・ケントをBGMに描き進める。深夜は、アルベルト・ジャコメッティのドキュメンタリー映画『Eyes on the Horizon』(監督:ハインツ・バトラー、2005)のDVDを観る。好きな彫刻家だし、実際に彼が両手を使って土や石工をいじっている映像を初めて見たので感動した。彼の「頭」に対する執念もこの映画で少し理解できた気がする。先日恵比寿で見た写真家ブレッソンが嬉しそうにジャコメッティの写真を見せながら解説しているのも貴重な映像だった。当時のパリの空気は凄かったのだろう。

12月13日(日)
 午前中、ゆっくりメール作業。昼から兄貴家族と遅めのランチ。午後からまたドローイングを描き進める。それからCGの仕事を仕上げていく。丁度スケッチを始めてエスキースも進んできたので第一案としてまとめる。あっという間に又一日が過ぎていく。今年も残り二週間とちょっと。

yk yk

12月12日(土)
 天気もよく部屋の掃除で一日をはじめる。CGの仕事、今週末で仕上げられそうだ。昼、ドローイングを進める。描けば描くほど新しいアイディアが出て来て時間を忘れる。きっと展示を通して多くの反応を頂いたので、それらの会話を通して生まれたイメージを紙に落とし込んでいる。

 夕方、お台場へ。GALLERY21にてM.HASUIさんによる写真展『WATER LAND』を観る。作家さんのトークショーもあり、作品に込められた思いを知る。直接展示会場にて作品を一緒に観て回りながら話が聞けるという実に贅沢な写真体験。とにかく最後に一度引いて会場を見たら、正にM.HASUIさんの写真が空間の中で「窓」として存在し、写真を通してその先に視える風景が観客の創造力を掻き立てることをスッと理解した。色々と話を伺った中でも「無くなっても困らないことにこそ何か大切なものを生み出す可能性がある」という言葉が深く印象に残る。

 夜、美味いブリ大根を食して代官山の『M』に行く。服飾デザイナーとかぐデザイナーの友人たちと久しぶりの再会。ドローイング作品と共に展示しているテキスタイルについてもあれこれアイディアを相談する。一緒に何かを作りたい仲間なのでこうしてゆっくり情報発信を進めたい。その後も、大学時代の友人も合流したり、シンガーソングライター、DJなどさまざまな人たちと知り合って盛り上がる。

yk yk

12月11日(金)
 午前中、メールなどの雑務。昼、所用で渋谷。午後、恵比寿で打ち合わせを一本済ませて事務所に戻る。CGの仕事を進める。一日中冷たい雨が降り続けていた。

 夜、スタン・ゲッツのサックスを聴きながらドローイングを進める。集中していたらあっという間に時間が過ぎていく。画用紙もいよいよ線で埋まって来た。このペースなら以外に早く完成するかもしれぬ。もう少し描き込んだら着色作業に取りかかろう。

12月10日(木)
 午前中、メールなどの雑務。午後からカフェでCGのスケッチ。いよいよエスキスもまとまってきたので、第一段階を仕上げたい。赤坂で打ち合わせ一本。続けて青山のユトレヒトにて『CONDITIONS』を見てもらう。色々と率直な反応があり、じっくりと日本展開を考える。

 夜、グラフィックの仕事を一気に仕上げる。代官山の『M』にて友人の誕生会などワイワイする。フランス人デザイナーやイギリス人シンガーと知り合ったのでいつか一緒に何かできると面白い。

 深夜、この時間はゆっくりドローイングを進める。沈黙の中、描き続けることで新しい地平線が視えてくる。この小作も波に乗って来たようだ。

12月9日(水)
 午前中、メールなどの雑務にCGのスケッチ。午後、写真美術館にて『木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン』展を観る。ブレッソンの写真は、ベルリンでの回顧展で観たのでおなじ作品もいくつかあったが、何よりこの展示の魅力は、木村伊兵衛とブレッソンを同時に見せてくれることでコンパクトカメラ、ライカのフロンティアたちの挑戦が興味深い。ブラックとピカソを同時に観ることでキュビズムが分かるように。さて、二人の違いとして思ったのは対象に対する距離感。木村がどんどん寄って対象との距離感を詰めていくのに対して、ブレッソンはどこかドライにある距離を確保して対象をドンと構えて捉えていく感があった。それぞれが撮ったポートレートも印象的。展示の最後にそれぞれのコンタクト・シートが観られたのも実に興味深い体験だった。

 夕方、カフェで仕事。原稿や展覧会のスケッチに読書。『人間の器量』(福田和也、新潮新書、2009)を読み終わる。最近読んだ内田樹と筑紫徹也の新書が日本論だったが、これもまた人間の器量を軸に語る日本論。小さくなってしまった日本人の器量を先人たちに習っていかに器量を大きくするかについて五つの条件が挙げられている。「一、修行する 二、山っ気をもつ 三、ゆっくり進む 四、何ももたない 五、身を捧げる」。この三人に共通することは、やはり白/黒といった二元論ではなく、その中間もあることを自覚し、受け入れることで自身の価値体系をしっかりと構築することが「辺境人」として「若者」が「器量を大きく」生きていく上で大事だと言っているのだろう。

 夜、目黒川沿いをゆっくり走る。無心の時間。ドローイングに又ペンを入れる。ほんの少しずつだが新しい幻想都市風景が立ち上がって来ている。

12月8日(火)
 午前中、青山ブックセンターにて雑誌『CONDITIONS』の打ち合わせ。続けて、ワタリウム美術館にあるOn Sundaysにて同じく雑誌を見て頂いて相談。午後は、お茶の水まで行って南洋堂にも置いてもらえそうな話がまとまったので一安心。

 青山の大坊珈琲で一休みし、夕方サンロゼ赤坂にて「紀尾井町の流儀コンサート」を聴く。津軽三味線奏者の上妻宏光さんとフラメンコギター奏者の沖仁さんによるスペシャルライブ。とにかく初めて聴く二つの楽器のハーモニー。生の音がそれぞれの幅を持って空間と絡み合い、沢山の風景が頭の中を駆け巡った。実に濃厚で素晴らしい音楽体験であった。こうしたアクションを含めて紀尾井町を盛り上げようとしていることに共感する。帰り際、石山研究室のチリ人・アベルとばったり会う。彼はチリの展覧会を早稲田大学で企画し、明日から中国の設計事務所で働くらしい。思えば6年前に来日して、学生だった頃からの友人だがいつもエネルギッシュに動いていて懐かしい話で盛り上がる。

 夜、早速『CONDITIONS』の日本展開についてのレポートをまとめて送信。すぐさまノルウェーから電話がかかって来て、反応を喜んでもらい、しっかりと検討したいとのこと。これから一緒に何かできるように約束する。こうしてベルリン時代の建築家の同僚たちが頑張っていて、ボーダーレスに仕事ができることは実に喜ばしい。

 深夜、読書をしてドローイングを少しだけ描く。2000年にまとめられたBMWJapanによるカタログ『Sur/FACE(14人の現代建築家たち)』を再読する。オーストリア人の写真家、ローランド・ハーゲンバーグによる写真とインタビューでまとめられていてそれぞれの仕事に対する姿勢から建築や都市に対する思考が読み取れて、また刺激になった。

12月7日(月)
 午前中、メールなどの雑務。午後、新宿にて雑誌『CONDITIONS』の日本展開についての打ち合わせ。東京で建築系洋書を扱っている書店五店舗との打ち合わせを済ませてからレポートを作成して出版元のノルウェーに送りたい。今のところ反応は上々。

 カフェでCGのスケッチを進める。たたき台が出来上がったので、それをブラッシュアップしていきたい。深夜、ドローイングにペンを入れる。新しい表情を獲得するために頭を空っぽにする。

12月6日(日)
 冬晴れの日曜日。甥と姪と遊んでゆっくり過ごす。午後は、読書とドローイングを交互に進める。夕方、先週の河口湖マラソン以来になるランニング。久しぶりに目黒川沿いを走る。すっかり体も重くなっていて、走ることを習慣化したいものだ。

 夜、CGのスケッチを考える。深夜、ドローイングを更に進める。今作も着色しようと考えているが、トーンを赤系のみに限定してみたい。まだ線を描いている段階なのでカラーリングは後ほど進めたい。年内に完成予定。

 『若き友人たちへ』(筑紫哲也、集英社新書、2009)を読み終わる。筑紫さんが亡くなって一年になるが、高校生の頃から『ニュース23』を見ることも、毎日「多事総論」を聞くことも当たり前だと思っていたが、もう過去の話。読んでいて、何だか筑紫さんの声がまた聞こえてくるような感覚になり、一気に読み終わる。本質を見抜くためには批評眼を磨き続けることが大切で、文化的好奇心の大きさも再認識させられた。憲法から映画まであらゆることに対して自身の物差しをメディアに影響され過ぎないで築くことの大切さこそ本書の一番のメッセージだろう。

12月5日(土)
 午前中、ゆっくりする。部屋の片付けとデスクワーク。

 午後、中野で友人と合流し『ラッキーバニーボーイ』(作・演出:亀田真二郎)を観劇する。テーマパークのメインキャラクター、ラッキーバニーボーイの中に入るという仕事を共有する仲間たちの物語。シンプルな事件を解決していく構図の中でそれぞれの役者さんたちがコミカルにぶつかり合うユーモアのある芝居だった。劇場を出た時は大雨。夕方、甥と姪が遊びにくる。子供たちの成長の早さとエンドレスな元気に翻弄される。

 『日本人辺境論』(内田樹、新潮新書、2009)を読み終わる。はじめから先人たちの論考(丸山/澤庵/養老/梅棹)をまとめただけで語り尽くされている「辺境」というテーマについて新しく書けることは少ないと言い切る潔いスタートの本だが、とても面白かった。「きょろきょろして新しいものを外に求める態度」が日本人の本質であり、だからこそ辺境人は「保証人を外部の上位者につい求めてしまう」。そこから「学ぶ」ことの前提や効率の良さについてやレヴィ=ストロースのブリコルール(便利屋)という概念まで語られていて綺麗な補助線が頭の中に引かれた気分。『日本文化私観』という同名の本を書いたブルーノ・タウトと坂口安吾の構図を思い出した。

 深夜、少しばかりドローイングを描き進めた。雨はまだ降り続いている。

12月4日(金)
 朝から気持ち良い日差しが差し込み、昨日の雨で濡れた街が乾いていく。地面に落ちたイチョウの葉が美しい。午前中は、メールなどの雑務。ここ数日の展示でお会いした方々にも連絡する。

 午後、原稿のアイデアを整理してスケッチ。続けてCGの仕事も進める。夕方、白井版画工房にて年賀状を出来る限り刷る。夜は、『日本人辺境論』を読み続ける。僕にとって辺境という考え方が明確になっていくのが分かって目からウロコ。

12月3日(木)
 朝、グレープフルーツを剥いて食べる。どんより暗くて、冷たい雨が降り続く。メールなどの雑務。午後から仕事のスケッチ。原稿のアイデアや展覧会の企画について考える。

 夜、KLEEの太田菜穂子さんと会って近況報告と新しいプロジェクトの相談。思えば一年前のCHANELの展覧会で知り合って、キュレーションのみならず何事においてもプロであり続ける感覚が本質を突いていて刺激になる。ついに一緒に何かつくることができるかもしれないので今から楽しみだ。帰り際、新しい展示の始まった代官山の『M』に顔を出す。ベルリン在住のフランス人イラストレーター・イワンの作品群が展示されていた。当然、作品で空間は大きく印象を変え、面白かった。本人とも会って話していると英語よりドイツ語が良いということで久しぶりにドイツ語を話したが、不思議なもので帰国して一年半経つが、いざ話し出すとあまり忘れていないことに驚いた。

 深夜、ドローイングを書き進める。『日本人辺境論』(内田樹、新潮新書、2009)を読みながら寝る。

12月2日(水)
 午前中、新しいドローイングの構想を練って描き始める。展示をして沢山の人に観てもらうことで又新しい作品が生まれることになる。午後、CG制作会社が来所。アートディレクションとしての仕事のキックオフ。新しい試みなのでしっかりと進めたい。夕方、メールなどの雑務に追われる。

 夜、四谷にてコンテンポラリー・ダンスを観に行く。音をテーマにして、即興で空間と身体が対話する。続けて代官山の『M』でのドローイング展示を友人に案内して、近況を語り合う。この場所が色んな人にとっての交流の場となっていってほしい。帰り、左側が少しばかり欠けた満月が夜空に輝いていた。

12月1日(火)
 午前中、メールなどの雑務。南船橋まで行って所用。午後、テキスタイルのプリントの展示についてブレスト。原稿のスケッチを組み立てる。職人さんから新しい案件の相談の電話が入って対応。面白いプロジェクトにしてみたい。

 夜、代官山の『M』に行って、テキスタイルの展示を追加する。遊びに来てくれた友人たちにドローイング作品を観てもらい色々と話し込む。職種も世代も違うが、フィーリングが近い仲間同士なので一緒に何かできると面白いだろう。続けて恵比寿のバーで飲み、これまた不思議な出逢いがあったりして楽しくウィスキーを飲む。今日から12月、終わりよければすべて良しなので、精一杯頑張りたい。

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